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【Vol.405】冷泉彰彦のプリンストン通信『アメリカの分断疲れ』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「社外取締役は広告塔という勘違い」  近年、多くの企業で女性アナウンサーや女性の芸能人を社外取締役として 迎えるという風潮があるようです。報道によれば、 「歌手でタレントの島谷ひとみ氏が、新型コロナウイルスの抗原検査サービ スを手掛ける「ICheck(アイチェック)株式会社」の社外役員に」 「洋菓子メーカー「不二家」が女優の酒井美紀氏を取締役に」 「SBIホールディングスが、元TBSアナウンサーの竹内香苗氏」 「「コーセー」は元フジテレビアナウンサーで現在は弁護士の菊間千乃氏」 「「日本郵政株式会社」は国谷裕子氏」 を取締役に選任した。  などが、社外取締役に選任されているようです。確かにブームと言われて もおかしくありません。  しかし、これは非常におかしな話です。社外取締役というのは広告塔では ありません。具体的には次の3つの責任が発生するからです。  1つは、社内出身の役員や取締役が暴走して、株主の利益を損ねるような 経営をしていないかを第三者の立場から厳しく監視するという役目です。  2つ目は、役員や取締役の人事や給与など「彼ら自身が決めると利害相反 になる」問題については、取締役会を代表して判断し決定する責任がありま す。  3つ目は、仮に取締役会が背任などの問題を起こして機能不全に陥った際 には、社内取締役の権限を停止して、社外取締役が非常時の経営責任を負う ことがあります。  この3つは非常に重いわけで、そのために多くの場合は、経営のプロ中の プロ、例えば年商1兆円以上の巨大企業のCEOを務めて円満リタイアした 人物であるとか、環境問題で世界的に著名な論客でビジネスの制度も理解し た人物、などを選任するのが企業の価値を高めるとされています。  上に掲げた人々が、その責任を全うできないとは言いません。個々の問題 については、ケースバイケースだと思います。国谷氏が、日本郵政の更なる 経営粉飾を暴露して、その解決を主導する可能性はあるでしょうし、菊間氏 が「コーセー」の現場に何かブラックな問題が起きた場合には是正の役回り を果たすことはあると思います。  ですが、ブームに乗って女性タレントを社外取締役に迎え、彼女らに企業 の広告塔になってもらうというのは、勘違いも甚だしいものがあります。そ んなことがしたいのなら、非常勤の執行役員とか非常勤の専門職として活動 して貰えばいいわけで、社外取締役というのは全くの筋違いだと思います。 (続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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