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週刊 Life is Beautiful 2021年11月30日号:Waymo vs. Tesla

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん Waymo vs. Tesla 先日紹介した、Lex FridmanによるBoris Sofmanのインタビュー(#241 - Boris Sofman: Waymo, Cozmo, Self-Driving Cars, and the Future of Robotics)の中で、自動運転に対する Waymo と Tesla の違いについて語られていたのに触発されて、私なりに一度まとめる必要があると感じました。 大きな違いとしては、Waymo は、カメラの他にライダーやレイダーを搭載し、人間の運転手がいなくても運転できてしまう自動運転(レベル4、もしくはレベル5)を目指していますが、Tesla は、カメラだけを活用し、運転手を高度に補助する形の自動運転(レベル2、もしくはレベル3)を目指している点です。 どちらも「自動運転技術」ですが、目的もアプローチも大きく異なるので、それらの違いを理解した上で比較する必要があります。 トレーニング:Waymo はいきなりレベル4(完全自動運転)を目指しているため、基本的にはシミュレーター上でトレーニングとテストを十分に重ねた上で、公道で走らせる、というアプローチをとっています。そのため、ニューラルネットワークの「トレーニング」はシミュレータで行い、公道での走行は、そのニューラルネットワークを使った「実証実験」でしかありません。公道での走行で問題が起これば、それが起こった状況をシミュレーターに追加するという形で対処しています。 一方の Tesla は、実際に公道を走っている Tesla 車を対象としてレベル2(運転手の補助)からスタートしているため、そこから集まってくるデータを使ってニューラル・ネットワークのトレーニングをしています。自動運転中に何か問題があると、運転手がハンドルを切ったり・ブレーキを踏んで衝突を解除する仕組みになっていますが、そんな運転手の行動そのものが、重要な教育データとして活用されているのです。Tesla はそれどころか、同時に二つの異なるニューラルネットワークを走らせ、どちらがより正しい判断ができるかのテストなども行っているそうです。 この二つのアプローチはあまりにも異なるので、一概にどちらが正しいとは言い切れませんが、実車からの大量のデータを集めている Tesla のアプローチの方が、長い目でみれば有利だと私は思います。 センサー:Waymo は、カメラに加え、近いところにあるものの距離を測るライダー、遠いところにあるものの距離を測るレーダーの両方を使い、周りの状況を把握しています。このアプローチにより、深さ方向の情報をかなり正確に測定出来るため、その先の自動運転ソフトウェアは、より信頼性の高いデータに基づいた判断が出来ることになります。 Tesla は、最初からライダーは否定していましたが、最近になってレーダーも使わず、全てカメラのみで自動運転を行う方向に舵を切りました。一番大きな理由はライダーのコストですが、解像度の異なる複数のセンサーからの情報の整合性を取るよりは、カメラからの画像から深さ方向の情報を得る方が、よりシンプルなアーキテクチャでソフトウェアを構築できると主張しています。 ここは、エンジニアの間でも意見が真っ二つに分かれるところです。カメラからの深さ情報の信頼性が十分に高いのであれば、Tesla のアプローチの方が理にかなっているように思えますが、深さ情報に大きなノイズがあると、それが自動運転機能の性能に大きな影響を与えるので、そこが一番の懸念です。 フレームごとにはノイズが乗ったとしても、フレームをまたいで時間軸で対象物を捉えるようにすれば、そこでノイズは自然に除去されるから大丈夫という発想で、Tesla はノイズの問題に対処しているようですが、そこはソフトウェア技術者の腕次第とも言えます。 3Dマップ:Waymo は、走行する地域の3Dマップを持ち、その中で、常に3Dマップ上の自動車の位置を把握しながら、センサーから得られる情報を3Dマップ上の情報のマッチングを行いながら自動運転を行なっています。このアプローチを使えば、「どこが道路なのか」「車線はどこに引いてあるのか」が常に明確なので、より確実な自動運転が可能です。 Tesla は逆に、3Dマップは持たず、カメラから得られる情報だけから、道や車線の状況を把握し、自動運転を行います。このアプローチには「はじめて走る道路でも自動運転が出来る」という利点がありますが、道路と歩道の境が曖昧だったり、車線が消えていたりすると、安定した走行ができないという欠点があります。 この点も、技術者の間で意見が分かれるところですが、3Dマップの制作には膨大なコストがかかり、かつ、そのアップデートコストも膨大なことを考えると、Waymoのように限定した地域でサービスを提供するのであれば良いですが、Tesla のように、どこでも運転出来る自動運転車には現実的な答えではありません。 ちなみに、日産のプロパイロットが高速道路でしか使えないのは、まさにこの3Dマップが原因です。日本には、「ダイナミック・マップ・プラットフォーム(DMP)」という政府と自動車会社が出資した地図会社があり、そこが莫大な手間とコストをかけて3Dマップを制作していますが、現時点で出来ているのは高速道路のみなのです。 今後、地図の範囲を一般道まで広げる予定はあるそうですが、それに必要なコストをどこが負担するのか、そして、その後のアップデートに必要なコストをどう調達するのかが、いまだに曖昧なまま突き進んでいると、業界では言われています。 日本に新型コロナの第6波は来るのか? 日本で新型コロナの第5波が収束した理由、および、この後第6波が来るかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれているようですが、私は、日本と同じように「謎の収束」をしたインドについて調べ、そこから学ぶことが一番だと考えています。

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