今週のざっくばらん
ドローンベンチャーを立ち上げた理由
私がシアトルで立ち上げたドローンベンチャーに投資家からの投資が決まった話は既に書きました。その投資家と先週、昼食を食べたのですが、その時に、どうしてこの会社を立ち上げようと考えたのか、と尋ねられたので私なりに答えたのですが、今回はその話を簡単にまとめてみようと思います。
きっかけは、我が家の庭に出没する鹿です。庭の先は、人が登り降り出来ないぐらい急な崖なのですが、その先の森に鹿が住んでおり、時々、庭に来て悪さをするのです。
鹿の植物は植物の芽なので、春先になると、庭に植えてある、りんご、ブルーベリーなどの芽をことごとく食べてしまうのです。
フェンスで囲えば良いと思うかも知れませんが、鹿のジャンプ力はすごくて、1メートル半ぐらいのフェンスは楽々飛び越えてしまうのです。
そこで考えたのが、ドローンを使った「鹿(しし)おどし」です。普段はワイアレスの充電ステーションでチャージしておき、タイマーで20分おきぐらいに庭を飛ばして鹿を追い払おうというアイデアです。
飛ぶルートは毎回決まっているし、物体認識のような難しいことはしなくて良いので、簡単に実装出来るだろうと思ったのですが、全くそんなことはありませんでした。
そもそも、ドローン用の充電ステーションなど存在しないし、ドローンをコントロールするプロトコルも会社ごとにまちまちです。
ドローンをコントロールするプロトコルとしては、MavLink というオープンなものがありますが、DJIやSkydioなどのメジャーなドローンがサポートしていないため、業界標準と呼ぶにはほど遠い状況です。
ドローンそのものをコントロールするソフトウェアとしては、PX4というオープンソースプロジェクトがありますが、これも業界標準と呼ぶには程遠い状況にあります。
そんな状況なため、MavLinkでコントロールできるPX4を搭載したドローンが必要となれば、ドローンキットを入手し、自分で組み立て、OSをインストールするという、とんでもない手間をかけなければならないことが分かりました。
さらに悪いのは、MavLink経由でドローンをコントロールするソフトウェアです。QGroundControl というオープンソースのプロジェクトがあるにはあるのですが、Windows 用に書かれたかなり古いアーキテクチャのソフトウェアで、Mac や Linux に移植するぐらいなら、ゼロから書き直した方が早いようなしろものです。
この状況を知った時に、妙に懐かしい感じがしました。まるで、私がプログラミングを始めたばかりの「パソコンの黎明期」のような状況です。当時は、Windows どころか MS-DOS もなく、それぞれのパソコンメーカーが独自のOSでパソコンもどきを作っており、使いこなせるのは、時間が無制限にあるホビイストだけでした。
そこで思ったのは、「こんな状況がいつまでも放置されて良いはずがない。PX4などのオープンソースプロジェクトには企業のスポンサーが必要だし、コントロールソフトウェアは、もっとモダンなアーキテクチャで作られているべき」という思いでした。
そこで同時に気が付いたのは、これがとんでもないチャンスだ、という事実です。
私がパソコン業界で出来たのは、パソコンの黎明期にプログラミングを覚え、その上、絶妙なタイミングで、業界の大きな役割を果たすことになったマイクロソフトで働くことになったからです。
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