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高野孟のTHE JOURNAL Vol.527 2021.12.6
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1128》
この150年、日本に別の生きる道筋はなかったのか?/
津田左右吉『明治維新の研究』を読む
【2】《CONFAB No.528》
閑中忙話(11月21日~27日)
【3】《FLASH No.438》
北方領土交渉の内幕からも安倍政治の本質が見える NHK
特別番組のこざかしい細工まで/日刊ゲンダイ12月2日
付「永田町の裏を読む」から転載
※写真館はお休みです。
■■ INSIDER No.1128 2021/12/06 ■■■■■■■■■
この150年、日本に別の生きる道筋はなかったのか?/
津田左右吉『明治維新の研究』を読む
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津田左右吉『明治維新の研究』(毎日ワンズ、21年11
月刊
https://amzn.to/3Dsyj9U )が好評で、版を重ね
ているという。津田にまとまった明治維新論の一冊があ
るわけではないが、毎日ワンズ社が「著者が昭和22年か
ら最晩年〔1961年没〕に至るまでに月刊誌等に発表した
明治維新に関する論文を集め、新たに編集したもの」で
ある。根本趣旨は鮮烈で、帯に書かれているように「薩
長史観vs津田史学/「明治維新とは一口にいうと、薩長
の輩が仕掛けた巧妙な罠に征夷大将軍がかかって了った
ということである」というにある。
●150年前から成長していない薩長史観的な思考
この書が今時売れている理由はよく分からないが、私
としては大変喜ばしいことである。
なぜなら、明治維新から150年余り、薩長主導の大日
本帝国主義の思考様式を未だに超克することができない
でいることが、この国が抱えている不幸の根源であっ
て、そこを捲り返すには、司馬遼太郎の『竜馬が行く』
や『坂の上の雲』に代表される薩長ベタ褒め翼賛史観を
徹底的に吟味し直すことが必須だからである。
これは、単に歴史マニアの懐古趣味の話ではなく今日
の問題に直結している。例えば、本誌が前号で大平正芳
元首相の「21世紀への提言」の根底にある時代感覚とし
て「過去には西欧化、近代化、工業化による経済成長が
強く要請される時代があった。そこではそれぞれの要請
の内容が明らかで、目標とすべきモデルがあった。……
明治以来のこのような状態は、主として対外的劣等感か
ら生まれ、時にはそれを裏返した異常な独善的優越感と
もなった」との一節を引用し、そのような100年単位の
時代観や文明論が、せっかく宏池会の系譜を引きながら
岸田文雄首相には欠けていると指摘した。
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