■仕事の幸福度を科学的に高める
幸福な人生を送る上で秘訣となる習慣がある。その習慣を実行する
ことで幸せになれる。その秘訣が「ポジティブ心理学」という新し
い心理学から提案されている。
ポジティブ心理学の研究は、今から20年ほど前、ペンシルベニア
大学のマーチン・セリグマンの提案で始められた。科学的方法で実
証されており、ポジティブな心の働きを大切に考えている。
この心理学は「幸福だ」と感じている人にはどんな特徴があるの
かを研究している。これまでの研究成果から「幸福だ」と感じて
いる人たちの習慣が明らかになってきた。
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ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンも提案
しているとおり、人間の行動を支えているシステムは大きく2つに
わかれている。
1つ目は、色々な条件をよく考えて意思決定する「じっくりシステ
ム」だ。冷静で論理的思考が重要だ。自分が考えていることが意識
され「なぜ、そう行動するのか」が自分で説明できる。
2つ目は、素早い判断に使う「直感システム」だ。やる気や欲望、
動機を含む感情とつながりを持つ。無意識で論理的でもなく、社会
的偏見の影響を受け、ちょっとした誘導の影響も受けやすい。
日常生活では、この2つのシステムが私たちの中で補い合いながら
働いている。何事もじっくり考えていては、日常生活は送れないし、
いつも直感的に判断していては、大事な契約などでは困るはずだ。
ここで紹介する方法を知り「行動しよう」と考えるのは「じっくり
システム」のおかげだ。しかし、それを続けるには「直感システ
ム」も必要だ。自分の感情にも気を配るべきだ。
大事なことは、自分の中のじっくりシステムと直感システムの両方
をうまく使うことだ。そうすることで、幸福度の高い人の習慣を本
当に身につけていくことができるはずだ。
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フローは、クレアモント大学院大学のチクセントミハイが注目し、
研究している特別な経験だ。フローとは、その時に行っている行為
によって、我を忘れるほど楽しいと感じる状態のことだ。
フローの特徴は、まず満足感があることだ。そして、熱中していて
集中力が高く、コントロール感を感じることだ。時間があっという
間に過ぎる感覚から、流れる=フローと名付けられた。
日本では、チクセントミハイの弟子である法政大学の浅川希洋志に
よる先導的な研究が進められ、日本人でも、フローを経験すること
が多い人ほど、生活の満足感や充実感が高いことがわかっている。
フローに重要なことは、明確な目的と、すぐフィードバックが得ら
れること、自分がコントロールできているという感覚、目標が自分
に合ったレベルで、頑張れば達成できるだということだ。
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世の中には、単純労働と呼ばれる仕事がある。こうした仕事でフロ
ーを感じることもできる。これについてチクセントミハイは、掃除
を仕事にする印象的な人の例を挙げている。
この人は、他の人のように一通りの掃除をするのではなく、その仕
事の中で自分ができるベストを追求し、自分のスキルの限界に挑戦
することで、フローを経験していた。
もちろん、その仕事は、他の人とは比べようもないほど素晴らしい
出来栄えだった。そして掃除の仕事で自分の挑戦の余地がなくなっ
た時、別の仕事に移って、更なる挑戦を見つけていった。
このように、今、自分が取り組んでいる仕事の中でベストを尽くす
ことだ。小さくても、日々挑戦をすることこそがフローを経験する
近道だ。
アスリートや音楽家はフローを感じやすい。それは、目の前の課題
に挑戦し続けているからだ。仕事は、時間の大部分を占めているは
ずだ。人生を充実させるなら、仕事で挑戦を楽しむことだ。
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