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第156号(2021年12月6日)ロシア軍のオホーツク防衛大演習 ウクライナ侵攻の現実味 ほか

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●今週のニュース ロシア軍が17万5000人でウクライナ侵攻を計画中? ほか ●インサイト ロシア軍のオホーツク防衛大演習が人知れず(おそらく)進行中 ●NEW BOOKS 髙橋博史『破綻の戦略』ほか ●編集後記 続・猫と暮らせば =============================================== 【今週のニュース】ロシア軍が17万5000人でウクライナ侵攻を計画中? ほか ・ショイグ国防相がインド入り 『TASS』2021年12月6日 <https://tass.ru/armiya-i-opk/13116553>  ニューデリーで開催される印露2+2(外交防衛閣僚会合)のため、ショイグ国防相が訪印した。これと同時にロシアのプーチン大統領もインド入りしてモディ首相との首脳会談を実施する予定である。  ロシアはインドにS-400防空システムを売却する契約を2018年に結んでいたが、インドが契約を実行すれば制裁対象にするという米国からの警告を受けて実施が阻まれていた。しかし、11月に報じられたところでは、プーチンの訪印に合わせて両国はS-400の供給を実行に移すとされており(https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/India-ignores-U.S.-sanctions-risk-receives-Russian-S-400-missiles)、今回の首脳会談はクアッド構想にとってひとつの試金石となろう。  ロシア封じ込めを優先してインドを制裁するのか、対中結束を優先してS-400の件を不問するのか、バイデン政権にとっては悩みどころであると思われる。 ・ツィルコン極超音速対艦ミサイルの潜水艦発射バージョンは2025年に配備 『TASS』2021年12月4日 <https://tass.ru/armiya-i-opk/13110077>  ツィルコン極超音速対艦ミサイルの潜水艦発射バージョンは2025年に配備開始となる予定である。匿名の情報筋談話としてTASS通信が報じた。最初の搭載艦は885M型多用途原潜ペルミになるとされている。  なお、ペルミは太平洋艦隊への配備が予定されていることから、我が国としても先端的な極超音速ミサイル対策はますます求められることになろう。 ・ロシア軍が17万5000人でウクライナ侵攻を計画中? 『ワシントン・ポスト』2021年12月3日 <https://www.washingtonpost.com/national-security/russia-ukraine-invasion/2021/12/03/98a3760e-546b-11ec-8769-2f4ecdf7a2ad_story.html>  米政府当局者の談話と情報機関の資料に基づいて米『ワシントン・ポスト』紙が報じたところによると、ロシアは来年初頭にも17万5000人の兵力(100個大隊戦闘団相当)を投入してウクライナへの全面侵攻を計画している。  この記事によると、ロシアが現在ウクライナ国境付近に展開している兵力は(ウクライナが主張する9万人でなく)7万人程度であるが、ここに夏以来動員している予備役兵力を含めた10万人を追加して侵攻作戦を行うとしている。  また、英『フィナンシャル・タイムズ』が報じるところによると、米国はロシアの侵攻の可能性に懐疑的な欧州諸国に対し、最も緊密な同盟国にしか共有しない情報を提供してドイツなどを説得している(https://www.ft.com/content/b287f2e3-3b8b-4095-b704-c255a943c84c)。米国が提供した情報は「非常に包括的なもの」とされ、これによって欧州諸国はかなりのショックと確信を得たと上掲の記事は報じており、7日に予定されている米露電話首脳会談を前に同盟の結束を図っていると考えられよう。 関連記事 ・第155号(2021年11月29日)現実味を増すロシアのウクライナ侵攻シナリオ 猫と暮らせば ほか <https://note.com/cccp1917/n/n07b690b85727> 【インサイト】ロシア軍のオホーツク防衛大演習が人知れず(おそらく)進行中 ・松輪島にバスチョン地対艦ミサイルを配備  前々号のインサイトでは、ロシアが中千島の松輪島に何らかの軍事施設を建設しつつある可能性を指摘しましたが(https://note.com/cccp1917/n/nb8abd473d43f)、ロシア国防省から早々に「答え合わせ」が出ました。こちらの動画(https://www.youtube.com/watch?v=233j8dZcDGk)です。  丘の上に造られた軍用コンテナ村の様子、ハンガーから出撃していくバスチョン地対艦ミサイルなどがはっきり写っています。映像では最大4両の移動式発射機とモノリート-B火器管制レーダーが確認できますから、おそらく1個中隊程度が展開してきたのでしょう。この動画に付されたロシア国防省の声明によると、バスチョンが松輪島に展開するのは初めてとのことです。

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  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
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