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【Vol.408】冷泉彰彦のプリンストン通信『民主主義サミットの限界』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「岸田政権のコロナ対策、本当に改善しているのか?」 (前略)  それはともかく、心配なのは本来のコロナ対策です。岸田政権は、菅政権 が政権末期に世論に見放された経験を踏まえて、その「経験に学んで」バー ジョンアップをしようとしている、その姿勢は見えます。また総理の発言に は相当な力が入っているのは事実だと思います。ですが、具体的な点に関し ては、まだまだ弱い点が気になります。4点指摘したいと思います。  1点目は、司令塔です。安倍政権の際には、初期には厚労省の幹部がデイ リーの会見をしていましたし、やがて当時の加藤勝信厚労相が司令塔的な会 見をしていました。ですが、勝信さんはどうしても勝信さんであり、カメラ の前では「組織防衛語」しか話せないことから外された経緯があります。  菅政権になってからは、田村厚労相(当時)が司令塔なのかというと、徐 々に西村康稔氏が経済(再生=この言い方やめませんか?)担当大臣になっ て、この西村氏が司令塔になっていました。つまり、厚労省が司令塔になる と、どうしても感染対策が経済より優先するニュアンスになるので、経済担 当が司令塔という形にしたわけです。  実は、この判断は五輪を強行するためでもあり、当時の世論は相当な違和 感を持っていたはずです。西村氏は、ここで「経済」と「役所」と「世論」 という、全く相入れない3つの要素を「ノラクラ」と渡って、何となく危機 管理風のコミュニケーションをやっていました。切れ味はないのですが、組 織防衛的とも言えない、意味不明ではないが曖昧ではあるという不思議な言 葉を話す人でした。  一方で、感染症の専門家については「分科会」という「傍へ追いやる」ネ ーミングに変わっており、これも「経済重視=五輪強行」シフトというニュ アンスであったように思います。  更に、これは菅さんのヒットだと思うのですが、ワクチン接種をスピード アップするために、担当大臣として河野太郎氏を置きました。河野氏は見事 に「突破力」を示したのは事実であり、この秋には急速な効果が確認できる ようにもなったと思います。  ですが、厚労省、経済再生相、ワクチン担当相という3人の大臣がいて、 そのほかにも官房長官がありというのでは、一体誰が司令塔なのか分からな いという状況であることは間違いありません。(ちなみに、菅政権の官房長 官は、勝信さんで依然として組織防衛話しかさなかったので、その点は混乱 はなったわけですが)  岸田総理は就任にあたって「健康管理庁」を設置して、コロナ司令塔を一 本化するとタンカを切っていたはずです。  健康管理庁に関しては、時間がかかるのは分かります。ですが、厚労相 (後藤茂之)、経済(再生)相(山際大志郎)、ワクチン担当(堀内詔子) という3人体制は変わっていません。しかも官房長官(松野博一)もいるわ けです。  しかも現時点では、4名とも知名度はイマイチであり、そのために新しい ことをやる際の説得力とか、説得の方法としてのキャラというのも認知され ていないわけです。  一方で、ご本人たちは現在の不安に満ちた世相の中では、国民の瞬間的な 世論に気を使ううはずが、現時点では「世論より組織防衛」という姿勢が透 けて見えます。それはともかく、とにかくこの4名の体制ではなく、スッキ リ司令塔を一本化しておかないと、この後で第六波が来た場合にも、反対に オミクロンが完全に弱毒かつ他の株を置き換えてくれて社会をオープンでき るようになった場合にも、明確な方針を示して世論とのコミュニケーション はできないと思うのです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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