在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説 大澤 裕
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「中国式民主主義」への各国報道
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バイデン大統領が主宰した「民主主義サミット」が12月9-10日にオンライン形式で行われました。目的は「国内の民主主義を刷新し、海外の独裁国家に立ち向かうため」です。
およそ110の国や地域の首脳などが招かれました。アメリカは、「専制主義国家」と位置づける中国を招待しなかった一方で台湾を招きました。
中国政府は、「民主主義にはいろんな形がある。我々は中国式民主主義だ」と新たな白書を公表して反論しています。この問題、各国の新聞はどのように伝えているのでしょうか?
まずニューヨークタイムズです。
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ニューヨークタイムズ(米国)12月7日
「バイデン氏の民主化サミットに先立ち、中国が発言。我々も民主主義国家である」
バイデン大統領が今週「民主主義のためのサミット」を開催する準備を進めている中、中国は「自分たちも民主主義だ」というありえない主張で反撃してきた。
中国共産党が14億の国民を支配し、野党に寛容でないこと、指導者の習近平が民選のない不透明な政治プロセスで権力を得たこと、中国で公に民主化を求めると厳しく罰せらることを考えるとそれはありえない。
中国に説得される民主主義国はないだろう。中国は世界で最も民主主義の進んでいない国のひとつであり、政治的自由と個人的自由のランキングでは最下位に近い位置にある。
全国人民代表大会は、党指導部が密室で行った決定にゴム印で押すために毎年春に開かれる議会組織である。習近平が自身の無期限の統治を可能にする憲法改正を強行したとき、無記名投票で2958対2であった。
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解説
米国のリベラルを代表する新聞であるだけに、「中国が民主主義だ」などという事はありえない、との論調です。
それでは次に香港のサウスチャイナモーニングポスト紙です。香港の英字新聞ですが、通常は中国政府に厳しい記事を掲載しています。しかしこの問題については中立的な論調のようです。
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サウスチャイナモーニングポスト紙(香港) 12月17日
先週、米国で「民主化サミット」が開催された。中国はこれに注目し、独自の国際民主化フォーラムを準備し、自国の政治体制に関する白書を発表した
両者は、民主主義の定義について、根本的に異なる理解を示している。
アメリカの立場は何世紀にもわたって明確である。自由で公正な選挙、法の支配、独立した司法、譲ることのできない権利と自由の保証である。
中国側は、社会的・政治的偏向、上位1%への富の集中、責任の不在、統治効率の低さ、社会的信頼の低さなど、アメリカの民主主義が抱える問題を指摘することに主眼を置いてきたと主張する。
また、中国はアメリカの民主主義の概念は普遍的なものではなくすべての国家に適用することはできないとも主張している。これは、アメリカには中国を批判する権利はなく、控えるべきだという主張である。
しかし、これまでの中国のガバナンスに関する言説には、重要な要素が欠けていた。アメリカの統治概念に同意しないのであれば、代わりにどのような統治を望むのかという点である。
中国外交協会と清華大学中国フォーラムが主催した「民主主義に関する対話」では、参加者が 「民主主義は結果(経済・社会の発展)によって評価されるべきだ」 という点を繰り返し強調した。
どの政治体制も何らかの形で測定可能な「結果」を出すことを目的としている。 アメリカの場合、リベラルな価値観が推進され、統治の中に含まれているかどうかということだ。
つまり現在の議論は、まず国民の経済的・社会的発展を優先するのか、それとも譲れない権利や自由といったリベラルな価値を優先するのか、という価値観の問題に絞られてきている。
この問いに客観的な正解はなく、多くの国が中国と同じ考えを持っていることをアメリカは理解すべきである。同様に、中国は、国内を含む世界中の多くの人々が、この点に関してアメリカの見解を共有していることを理解すべきである。
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解説
香港サウスチャイナモーニングポストは中国の主張を認めてもいませんが、アメリカにも批判的です。
同紙は他の記事でもアメリカの民主主義サミットは分断を進めるものだと言っています。中国は自らの統治方法を世界に広めようとしているわけではないのに、米国は自らの正義を世界に押し付けようとしているというのです。
さて、最後にシンガポールのストレートタイムズです。
(以下、仮登録の上で本文をお読みください)
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