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元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」
2022年1月4日 新年特別号
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あけましておめでとうございます。澤田聖陽です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
本日は「新年特別号」として、新たに書き下ろした記事をお届けします。
前半部分は、年始のまぐまぐ公式メルマガ(MONEY VOICE)にも掲載されていますが、以下はその続きを含む全文となります。
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●2022年の中国経済は「冬の時代」へ。元証券会社社長が分析、世界規模の経済危機を招く虚飾崩壊と習近平“第二文革”に警戒せよ
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◆2022年、中国経済「終わりの始まり」
中国経済が厳しい状況に直面している。
2022年の中国の経済動向はどうなるのか、筆者による見通しを述べていきたい。
中国の2021年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率は4.9%と低い数値となった。
中国国家統計局は、国際商品価格の上昇、国内の一部地域における新型コロナウイルス感染や洪水など多方面の影響があったと説明している。
また第4四半期についても、中国マクロ経済フォーラム(CMF)という中国人民大学系のシンクタンクによると、前年同期比3.9%成長と、第3四半期よりも成長鈍化すると予測されている。
筆者は国家統計局が説明するような一時的な現象ではなく、既にコロナ禍前から中国経済は長い低成長時代に突入していると考えている。
低成長時代に入っていた中国経済が、コロナ禍でより一層厳しい状況に陥っているというのが真実ではないか。
◆中国のGDP数値の虚実
2018年に中国マクロ経済学者で、人民大学国際通貨研究所理事兼副所長の向松祚(コウ ショウソ)氏が、国内総生産(GDP)の成長率6.5%という政府発表数字に対して、同氏が入手した内部資料では、2018年の中国GDP成長率はわずか1.67%になるとした内容の発表をしたことがある。
中国国家統計局が発表する数字は水増しされており、信頼性が低いことは以前から多方面で言われてきた。
向氏の発表した数値が真実かどうかは検証する余地がないのだが、立場上全く根拠のない話をしているとも思えず、ずっと以前から中国政府発表の数値の怪しさが多方面で言われてきたことから推察すると、一定の説得力はあるのではないかと考える。
筆者も中国のGDP数値と貿易統計を四半期ごとに見続けているのだが、GDP成長率の推移と貿易統計の数字の辻褄が統計的観点から合わない部分が存在する。
中国経済が低成長時代に移行していくターニングポイントとなったのは、おそらく2015~2016年ではないかと考えている。
2015年は株価暴落によって「チャイナショック」発生した年である。
GDP成長率は2015年が6.9%、2016年が6.7%となっている。
一方、2015年の輸入の伸び率はマイナス13.2%、2016年はマイナス5.5%となっている。
嘉悦大学の高橋教授は自著の中で経済成長率と輸入の伸びの相関関係は極めて高いということを述べられているが、その論から言えば、このGDP成長率と輸入額が反比例している現象は怪しいと言える。(この高橋氏の理論に対ししては、一部で統計手法の変更等があったという反論もある)
個人的には中国政府が発表する数字に粉飾はあると考えているし、政府発表の数値はかなり水増しされているとは思う。
それ以外の要素として、この時期に天文学的な額の固定資産投資によるGDPの底上げ行われた。
2008年のリーマンショックから2018年までの10年間に、地方政府や国有企業、民間企業が合計約410兆元(7,000兆円)の固定資産投資を行ったとされている。
この固定資産投資の資金の多くは借金によって賄われている。
現在破綻の危機にある中国恒大集団もこの時期に不動産購入やM&Aによって、事業を急拡大している。
日本もバブル期に同じような状況を経験しているが、投資や固定資産取引による事業拡大は、ファイナンス環境が悪化し保有するアセットが下落に転じると、一気に収縮する。
その後に発生するのは長期の「バランスシート不況」である。
◆中国経済の長い冬の時代が到来
「バランスシート不況」とは、野村総合研究所のリチャード・クー氏がバブル崩壊後の日本経済を評した言葉だが、中国も同じような道を辿る可能性が高い。
資産バブル崩壊による景気後退局面において、不動産や株などの担保価値が下落し、企業のバランスシート(貸借対照表)は大きく棄損する。
バランスシートが大きく棄損すると、企業は借金の圧縮の為に資産を売却したり、設備投資の手控えが起こる。
これによって経済状況は悪化し、資産価格はさらに下落してより経済状況が悪化する。
この負のスパイラルを「バランスシート不況」と称している。
日本のバブル崩壊後は、まさにこの負のスパイラルが発生したわけだが、中国も同じ局面に立たされている。
中国は日本のバブル崩壊の事例を詳細に研究しており、日本と同じ間違いを起こさないという論がある。
これはおそらく間違いだろうと思う。
たしかに中国は日本の例を研究しているだろうし、一党独裁の全体主義的国家ゆえに日本と違って、強権的な手法も用いられるだろう。
だからといってバブルをソフトランディングできるかというと、バブル崩壊を先送りすることはある程度は可能だろうが、崩壊という最終的な結末を変えることはできない。
むしろ誤魔化しながら先送りをすることで、バブルが必要以上に膨らんでしまい、崩壊した時のダメージはより大きくなる。
中国の不動産バブルは、20世紀以降で他に類を見ないほど膨らんだ状態のバブルであり、これをソフトランディングできると考えるのは傲慢でしかないし、不可能であろう。
おそらく今後1~2年の間に不動産バブルの崩壊がより明確になり、中国はバランスシート不況に陥る。
おそらくその先は10~20年単位の低成長時代(冬の時代)が到来すると考えている。
◆中国は歪な経済大国
中国経済について、日本では中国との地政学的な関係もあり「中国経済凄い論」と「中国経済凄くない論」という二元論で語られがちである。
筆者は以前から中国は「歪な経済大国」であると評してきた。
中国は「凄い部分」と「凄くない部分」が極端に混在している国なのである。
「凄い部分」の代表的ものはAIやIoTなどの先端技術である。
特にAIについては、中国の現政治体制下においては、個人情報の入手や利用が民主主義国家よりも容易であるため、ビッグデータの蓄積で先行している。
また電子マネーやスマホ経済圏などについても進んでいると言っていいだろう。
2000年代以降に一気に経済規模が拡大したため、他の先進国のようにレガシーコストが少なく、電子マネーやスマホなどの新しいものが一気に普及しやすかったという土壌もあったように思う。
但し、問題点としてはこのような先端分野だけでは、中国の約8億人の労働者のほんの一部しか満たすことはできないということである。
そこがまさに「凄くない部分」に繋がるのだが、中国は米国、日本、ドイツなどの先進各国に比べて、競争力がある多種多様な製造業やサービス業の層が薄い。
製造業については、組み立てや汎用品の製造など、中国で製造すれば人件費が安いし労働力の確保が容易だから中国で生産するというものは多いが、そうでなければ絶対に中国で製造しなければいけないというものは少ない。
既に中国の人件費はかなり上昇しており、近年では政治的リスクも高いことが認識されてしまったため、中国生産の必然性が徐々に低下してきている。
現状ではグローバルサプライチェーンの中国依存度はまだまだ強いが、各国で経済安全保障を意識した国産回帰や、中国以外への製造拠点の移設という動きが出て――(この続きはメルマガにご登録ください)
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