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週刊 Life is Beautiful 2022年1月11日号:ソニーへの提案

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん ソニーへの提案 私の投資戦略は、基本的に「私自身が製品やサービスを気に入っている企業の株を長期保有する」もので、結果として、Apple、Tesla、Google、Microsoft、Nvidia、Netflix など、米国のIT企業の株が中心のポートフォリオとなっています。 株を持っている日本企業は3社しかありませんが、その中で最も持分の多い株がソニーの株です。日本の家電・パソコンメーカーの国際競争力が大きく落ち込む中、ゲーム・音楽・映画ビジネスではしっかりと高いブランド力を保ち、イメージ・センサー市場では、圧倒的なポジションを持つからです。 とは言え、いくつか現時点での経営方針に気に食わない点もあるので、株主の一人として、私なりの提案をしてみたいと思います。 今のソニーは、会社としての存在意義(ビジョン、企業理念)がどこにあるかが不明確なのが一番の問題です。ソニーグループは、会社の存在意義(Purpose)を「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」として掲げていますが(参照:Sony's Purpose & Values)、これは曖昧で幅が広過ぎ、形骸化しています、こんなビジョンでは、ソニーミュージックやソニーファイナンスを傘下に持っている理由が全く説明できないし、日々の仕事の助けに全くなりません。 会社のビジョンは、社員全員が共有・共感し、それを毎日強く意識して働くからこそ価値があるものであり、ここまでビジョンと実態の差が開いてしまった場合には、会社の分割も含めて、根本的な見直しが必要なのです。 まず第一にお願いしたいのは、エレクトロニクス・ビジネス(略称エレキ)からの(事業売却による)撤退です。古くからソニーにいる人にとっては、エレキからの撤退は屈辱的なものだと思いますが、時代は変わりました。 私自信、昔からソニー製品のファンで、ソニー製のレコーダー、テレビ、パソコンなどを持っていた時代もありましたが、今では、一つもソニー製品は持っていません(最後に持っていたのは、AIBO でしたが、2年ほど前に知り合いに譲ってしまいました)。 消費者向けの製品のブランド力では、Apple に完敗しているだけでなく、Samsung や LG にも負けており、もはや1流ブランドとは言い難い状況です。米国の Costco では、かろうじて、LG、Samsung に続いて第3番目のブランドとしてテレビを並べてもらっていますが、それも風前の灯火です。これ以上競争力を失う前に、売却すべきです。 ソニーのエレクトロニクス製品の中で、唯一、力強いブランド力を持ち、かつ伸び代があるのは、ミラーレスの一眼で、これだけは維持すべきだと思いますが、これについては後述します。 エレキからの撤退と同時に進めるべきなのは、エンターテイメント・ビジネスとイメージング・ビジネスの分社化です。 エンターテイメント・ビジネスは、ゲーム・音楽・映画を合わせたビジネスで、音楽や映像のストリーミング・サービスにより大きく変わりつつあるメディア・ビジネスにおいて、世界で最強のコンテンツを持つ会社として勝負に出ます(その意味では、Walt Disney が一番のライバルです)。 特に今後、映画とゲームの境が曖昧になり、メタバースやe-スポーツのビジネスが大きく成長するので、そこで所有するコンテンツの力を最大限に活用して、音楽・映画・ゲーム・メタバース・e-スポーツ市場の全てを全方位的に取りに行きます。Meta(旧Facebook)の野望など、コンテンツの力で吹き飛ばすことが十分に可能だと思います。 ゲームの開発環境と映画の制作技術も融合しつつあるので、今のうちに Unity か Epic Games のどちらかを買収し、汎用的な3D映像作成環境としての整備を進めるのも悪くないと思います。 ハリウッドでは、クロマキー(グリーンスクリーン)の代わりに巨大なスクリーンを後ろにおいて、リアルタイムで背景レンダリングをしながら撮影する技術が使われ始めていますが(参照:The Virtual Production of The Mandalorian, Season One、The Virtual Production of The Mandalorian Season Two)、そんな技術にこそ大きな投資をすべきだと思います(Walt Disney は、Lucasfilm の買収により、Industrial Light & Magic の技術を入手しています)。 イメージング・ビジネスは、イメージセンサーのビジネスをコアに、ミラーレス一眼、HalkEye、AI、自動運転技術などを含む、「レンズから取り込んだ情報を処理・活用するデジタル・ビジョン・ビジネス」へと拡張して行きます。 そのためには、深層学習に必須な行列計算を高速にするニューロチップも必須なので、ベンチャー企業を買収するなりして、世界中の優秀な人材を集める必要があります。日本のプリファードネットワークあたりは、良い買収ターゲットだと思います。

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