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【Vol.413】冷泉彰彦のプリンストン通信『バイデン政権は危険水域?』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「1都10県(?)のマンボウ適用要請という異常」  マンボウというのは、「まん延防止等特別措置」の略称だそうですが、そ もそも「蔓延」という漢語を使いながら「漢字の読めない人にも配慮」して ひらがな表記にするというのは、有権者をバカにしているとしか言いようが ありません。選挙でよく見る「すずき花子」とかいうやつで、ビジュアル効 果をサブリミナルに使う悪質な世論操作とも思えます。  そのマンボウですが、こうなったら「慢性感染予防対策依存症+選挙恐怖 症弱体政権維持の特別措置」という名称にしてその略語だとしたほうが良さ そうです。  とにかく、小池百合子さんは病床使用率が21.1%だとか言っています が、冗談ではありません。都の基準での重症者は「5名」だけで、重症病床 の利用率は「1%」です。それどころか、都の新規感染者の数字は低下傾向 にあります。そんな中で「マンボウ」というのは、人命優先などといった美 しい話ではないと思います。  これは政治です。  この間の「水際対策」もそうですが、岸田政権というのは、前任の菅政権、 安倍政権の「失敗」を教訓として、「とにかく強めで早めの規制」をかけて 来ました。その結果として、鎖国をすればするほど内閣支持率が上がるとい う「手品」を実現してしまったのです。  この「手品」の前には大きな「幸運」がありました。それは、菅前総理の 辞任、自民党総裁選、そして総選挙という一連の政治スケジュールが、「ワ クチン接種率向上による感染激減」というトレンドに重なったのです。その 結果として、大敗するはずの総選挙結果を「微減」にとどめることができ、 自民党単独での過半数という奇跡を実現したのでした。  これは全くの「幸運」であり、岸田政権の成果ではありません。正確に言 えば菅内閣の成果であり、菅=河野ラインの残した政治的遺産です。  岸田総理という人は、この「手品」つまり意味合いが薄くても、特にオミ クロンの市中感染が始まって水際の意味が薄くなった後でも、「厳し目に実 施すると世論が評価してくれる」という手法を意識的にやっています。その 上で、「幸運」つまり前回の総選挙の勝因もしっかり分析していることと思 います。  問題は、この後の「恐らく3週間のマンボウ」では、この「手品」と「幸 運」を掛け合わせた「筋書きのあるドラマ」を仕掛けてくるということです。  南アの例、そして欧州の事例、更には私の住むニュージャージー州と、そ の隣のニューヨーク州の実例を踏まえていうと、オミクロン株というのは、 感染力がデルタの3倍から4倍というのは実感として事実のようです。そこ で、次のような現象が起きます。 1)市中感染が始まると、猛烈な勢いで拡大します。ニュージャージーの場 合には12月中旬にオミクロンが出てくると、1日あたりの新規陽性者が3 000人台から2週間で一気に3万人まで10倍になりました。 2)ピークは一瞬で、その後は拡大と同じ速いペースで減少します。ニュー ジャージーの場合は、1月7日がピークで1日33000人となり、「RT (拡大再生産=1人が感染させる人数)」も1.67という恐ろしい値にな っていました。ところが、そこから僅か1週間経過した現在、本稿時点の1 6日には新規陽性者は14000で、RTは1.09と激減しています。  この急速な収束ですが、「ワクチン2回+ブースター」の免疫の壁、そし て感染して治癒した人の免疫の壁、これに加えて「感染を自覚しなかった」 人の免疫の壁、この3つの壁が「集団免疫レベル」を急速に達成することに よって起きる現象と考えられます。  日本、例えば東京の場合は人口比での感染数はアメリカほどではないもの の、既に東京ではピークアウトの兆候が出ていることからも、急拡大の後に は急速な減少が起きる可能性は濃厚です。日本の場合は、アメリカより「ワ クチン接種率が高いし、接種タイミングが新しい」ことで、ブースターを待 たずして減少に向かう一方で、高齢者についてはブースターが後から追いか けるので余計に強固な壁ができる可能性があります。  ということは、一つの可能性としては、 ・1月19日ごろ・・・・・・・1都10県(+)にマンボウ3週間発令 ・1月25日にかけて・・・・・東京、沖縄などで急速に感染減少 ・1月末から2月第1週・・・・3週間を待たずしてマンボウ解除  という経過をたどるというシナリオが成り立ちます。実は、オミクロンの 特性としてそうなるし、この期間も「重症化率は極めて低く、未接種で基礎 疾患の事例がほとんど」ということ、そして「重症者用のベッドの占有率は 極めて低レベル」という状態は変わらないと思われます。  ですが、ここからが大切なのですが、「マンボウ」を出して、その後で劇 的に感染が下がると「何となくマンボウの効果のように見える」わけです。 更に、「その結果としてマンボウを少し早めに解除できる」と、政権がやっ ていることが「カッコよく」見えるに違いありません。  これが「手品」と「幸運」を掛け合わせた「筋書きのあるドラマ」という わけです。そうすると、内閣支持率は更に盤石なものとなり、夏の参院選へ 向けての政権としての不安解消にはなるというわけです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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