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佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.1.24 Vol.688
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【今週のコンテンツ】
特集
土地神話が終わり、土地を押しつけあう「ババ抜き」時代がやってきた
〜〜「20世紀の神話」は今こそ終わらせるとき(第9回)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
土地神話が終わり、土地を押しつけあう「ババ抜き」時代がやってきた
〜〜「20世紀の神話」は今こそ終わらせるとき(第9回)
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わたしは近年、地方の移住者・多拠点居住者など新しいコミュニティの人たちと交流することが多くなり、そういうところで住宅や土地をめぐる話もよく見聞するようになりました。とくに福井県はわたし自身が拠点を借りており、地元の空き家対策NPOの代表が親しい友人ということもあって、地方における空き家の驚くべき現状に日々触れています。今回のメルマガでは、その一端を紹介してみたいと思います。
最初に軽く結論から言っておきます。人口流出が激しい地方の田園地帯では、土地はもはや資産どころではなく完全に「負の資産」になっており、持っているだけで負担が増えるばかりであり、だから所有する土地をなんとか誰かに手渡してしまいたいという人が増えているということ。つまりは土地をめぐって盛大な「ババ抜き」が進行しているということです。
たとえば、とある漁村にある大きなお屋敷。もとは旅館だったといい、許可をいただいて中に入ると、豪華な欄間をそなえた立派な和室がずらり。縁側に面した雨戸を開けると大きな石灯籠がそびえる日本庭園があり、茶室も見えます。しかし現在は空き家になっており、隣町に住む所有者の男性が月に一度ほど掃除に来ているだけです。
広い宅内は掃除するだけでもたいへんそうです。かといって放置して朽ち果てていくのを見るのも忍びない。さらに言えば空き家対策特別措置法(2014年にできた法律)で、放置されてボロボロになった空き家は行政が強制的に取り壊し、その代金を所有者に請求できるようになりました。普通の戸建てでも取り壊し費用は150〜250万円と言われていますから、この大きなお屋敷になるとおそらく数百万円は下らない。放置したままにして代執行の対象になってしまうと、たいへんな出費です。加えて地方の狭い社会では世間体もあります。
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