■鈍感力を磨く
人生には「気にすべきこと」「気にしたほうがいいこと」がある。
その一方で「気にしないほうがいいこと」「気にすべきでないこ
と」もある。
「気にしたほうがいいこと」は、自分を高め、他人を安心させるこ
とだ。こうすれば「自分はいい方向に向かう」「あの人は楽にな
る」など、今より向上することは気にしたほうがいい。
反対に「気にしないほうがいいこと」とは、気にしても自分が向上
できそうもないこと、自分をみじめにすることだ。「気にすべきで
ないこと」は、自分の力ではどうにもできないことだ。
ところが、人は「気にすべきこと」や「気にしたほうがいいこと」
を気にせず、「気にしないほうがいいこと」や「気にすべきでない
こと」ばかりが気にしてしまうものだ。
★
きっちりしすぎてスキがないために、崩れると一気に崩壊してしま
う人がいる。ある程度の“いい加減さ”は強いものだ。強いからこ
そ“いい加減”になれるともいえる。
サーカスのピエロは、いい加減なことばかりしている道化者だ。し
かし、一番の経験者にしかなれない。危険な技を知りつくしていな
ければ、演者を手助けすることができないからだ。
「いい加減」には、二つの意味がある。一つはチャランポランで、
あやふやなことだ。もう一つは、良い加減だ。つまり、ちょうどい
いという意味だ。
本当にチャランポランな人は、周囲からアングリ口をあけられてし
まう。だが、しっかりした力を持っている人が「いい加減」なのは、
とても粋だ。
どんな時にいい加減でよくて、どんな場合でいい加減ではいけない
のかを知るべきだ。人生は、長い時間をかけて“いい加減”につい
て教えてくれる先生なのだ。
★
恋人同士や人気稼業の芸能人ならともかく、普通の付き合いをして
いる間柄なのに「相手が自分をどう思か」ばかり気にする人がいる。
理由は、よく思われたいからだ。
それ以上に、悪く思われたくないからだ。人から嫌われたいと思っ
ている人はいない。だが、自分をどう思うかは相手の問題だ。相手
の心をコントロールすることはできない。
それをコントロールしようとするから、必要以上に媚びへつらい、
可愛い自分、ユーモアのある自分をアピールすることになる。無理
していい子になろうとするから、結果的に疲れてしまう。
「嫌いでないなら好き、好きでなければ嫌い」とか「どちらかと言
うと好き?嫌い?」という風に二元論で考えていると、融通の利か
ない人間観に陥ることになる。
自分がやっていることの満足度があがれば、人の評価は気にならな
くなる。だから、人からどう思われているかが気になって仕方ない
なら、やりたいことを見つけて、努力してみることだ。
★
家族の中でも、人それぞれ違った価値観を持っている。世間一般で
はなおさらだ。出会う価値観は実に多種多様だ。それぞれの価値観
を持ち出せば、どこまでいっても平行線になる。
歩いて議論すれば、地球を何周しても埒があかない。「ま、そうい
う考え方もあるよね」とまず相手への理解を示すことだ。自分の価
値観を押し通すより、心が穏やかになるからだ。
日本人は理解と同意を同じと考えがちだ。「私の言っていることが
理解できるなら、どうしてそうしないのか」と怒る人がいる。だが、
理解と同意は違う。
自分が同意するかは別として、理解できるという意味で「ま、そう
いう考え方もあるよね」と思い、相手に伝えればいい。こうすれば、
日常の些細な価値観の相違には、ほとんど対処できるはずだ。
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■■それは「考えすぎ」
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信頼できる人が欲しくてたまらないのか、夢見ているのか「自分が
信頼している人は、決して自分を裏切らない」と頑なに思っている
人がいる。だが、裏切りなど当たり前のようにある。
人は、親や周囲の期待や信頼を裏切りながら生きている。自分でや
ろうとしたことができないことで自分を裏切っている。不本意だろ
うが故意だろうが、人を裏切っていることには変わらない。
だから、自分が裏切られるのも当然だ。このように当たり前と思う
ことが、心穏やかに生きる上で大切なキーワードだ。人は、当たり
前だと思っていることで傷ついたり、落ち込んだりしないものだ。
自分からはなるべく人を裏切らないようにしたいと思えばいい。同
時に、人は何か縁が加われば、自分を裏切ることもあると覚悟すれ
ば、今よりずっと強くなれるはずだ。
★
自分に反論する人、自分を無視し、邪魔する人を警戒し、敵意をむ
き出しにする人がいる。味方以外は全員敵と思いたくなるほど、つ
らい幼少期を過ごしたのかも知れない。
そういう人にとって、世間はいつも神経をピリピリさせておかなけ
ればらない戦場のようなものだ。だが、世間の人のほとんどは、味
方ではないが敵でもない。
戦場にもっとも似合わないのは笑いだ。だから、自ら敵を作ってし
まいがちな人は、心の底から大笑いできる場にいる時間を増やせば
いい。
寄席に通うのもいいし、落語のCDを聴くもいい。質のよいお笑い
テレビ番組を観るのもいい。笑いは、ピリピリした心を徐々にほぐ
してくれるものだ。
★
人は、乳離れしてから、幼稚園、小、中学校の卒業など、たくさん
の別れを経験してくる。それはゴールであると同時に、いつも新し
いステージに向けたスタートでもある。
ところが、この別れをうまく処理できない人がいる。別れ上手や別
れ下手という言葉はないが、恋人とうまく別れられない人も増えて
いる。ストーカー被害もそのひとつだ。
ママロスの人も増えている。そういう人は、生前から母親と濃密な
関係があり、母親に依存し過ぎていることが多い。それぞれ独立し
た個性のはずなのに、親離れ、子離れができていない人が多いのだ。
別れは必ず来ることを知るべきだ。そして、次のステージを楽しみ
にできる心を養っておくことだ。それは人生最大の別れである死で
も同じだ。「死んだら終わりではない」という感覚が大切だ。
先祖のお墓参りは、この点でとても有効だ。別れ上手になるために、
過干渉を避け、お墓参りしてみることだ。お墓は仏の国に通じてい
る、時空を超える“どこでもドア”なのだ。
★
仕事をしたり、人と付き合っていく中で、自分のことを誤解された
くはないものだ。誤解を防ぐために、人に話をするときは、相手に
5W1Hを丁寧に説明するべきだ。
それでも、誤解されてしまうこともある。困ったことに自分がどう
誤解されているかは露顕しないとわからない。誤解されている場合、
時には誤解を解く必要があることもある。
だが、わざわざ誤解を解かなくても、自分の信念さえしっかりして
いれば、いつか誤解は解けるものだ。仮に解けなくても、それは相
手に人を見る目がないだけだ。放っておけばいいことも多い。
誰もが、多くの人を誤解している。だが、相手も時が経てば変化す
るものだ。自分の受けとり方も変化する。久しぶりに会ったら、思
っていたような人でなかったと感じることはよくあるものだ。
だから「この人はこういう人だ」と固執するべきではない。それが
色眼鏡を外すということだ。色眼鏡で人を見ていないか考えてみる
べきだ。
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