存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。
【目次】
●NEW CLIPS ベラルーシにロシア軍東部軍管区の部隊が続々と展開
●インサイト 大谷翔平は野球をサッカーに変えるか:北朝鮮の極超音速ミサイル開発を考える
●今週のニュース ロシア海軍が世界規模の大演習実施へ ほか
●NEW BOOKS 森本敏・小原凡司編『台湾有事のシナリオ』ほか
●猫が一緒に寝てくれました(喜)
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【NEW CLIPS】ベラルーシにロシア軍東部軍管区の部隊が続々と展開
・ウクライナ国境に近いホメリ(ゴメリ)州レチッツァの駅に到着したロシア軍部隊。近代化改修型のT-80BVMを装備していることから東部軍管区の第64独立自動車化歩兵旅団から抽出されたBTG(大隊戦術グループ)と見られる。
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https://twitter.com/Michael1Sheldon/status/1484984690683650057?s=20>
・こちらはT-72Bを装備した別の部隊。計31両映っており、1個戦車大隊の定数ピッタリであることがわかる。
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https://twitter.com/GirkinGirkin/status/1484840302208761859?s=20>
・さらに航空宇宙軍のSu-35S戦闘機12機も極東(おそらく第23戦闘機連隊)からベラルーシに展開した。
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https://www.youtube.com/watch?v=S2rxAkc92F8>
・(動画ではないが)こちらはミンスクとホメリの間ぐらいに位置するアシポヴィチで撮影されたロシア軍のイスカンデル-M戦術ロケット・システム(今週のニュースのコーナーも参照)
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https://twitter.com/MotolkoHelp/status/1484446475773960192?s=20>
【インサイト】大谷翔平は野球をサッカーに変えるか:北朝鮮の極超音速ミサイル開発を考える
先日、アメリカのメディアから北朝鮮のミサイル開発について書面インタビューを申し込まれました。今夜中に欲しいというので急いで書いたのですが、送ってみるとあっさり「あの企画はナシ」というので「そういうとこやぞ」と思いつつ以下に供養しておきたいと思います(先方からの質問事項をそのまま転載するのは躊躇われるので、趣旨を損なわない程度に少し変えてあります)。
Q. 北朝鮮の極超音速ミサイルはゲームチェンジャーと言えるか?
A. どの「ゲーム」の話をするかによる。
大谷翔平がロサンゼルス・エンゼルスからシアトル・マリナーズに移籍したら大リーグ西地区のパワーバランスは大きく変わるだろうが、やっているのは依然として野球というゲームである。同様に、北朝鮮が極超音速ミサイルを保有すれば東アジアの軍事バランスは影響を受けるだろう。
しかし、大谷は野球をサッカーに変えるわけではない。この意味では北朝鮮の極超音速ミサイル保有は「ゲームの内部」における変化である。これまで行われてきたゲームは、ミサイル防衛によって北朝鮮の限定的なミサイル攻撃を無効化するとともに(拒否的抑止)、仮に米国やその同盟国にミサイルが着弾するような事態になれば米国による報復攻撃を招く(懲罰的抑止)という二つの柱で構成されていた。
このうち、北朝鮮の極超音速ミサイルは拒否的抑止を不安定化させる可能性があるが、懲罰的抑止に影響を及ぼすものではない。
また、極超音速ミサイルは拒否的抑止を完全に無効化するものではない。日本について言えば、従来のミサイル防衛はイージス艦のSM-3による中間コース迎撃とPAC-3による終末迎撃で構成されてきた。北朝鮮の極超音速ミサイルは高度5万m程度の非常に低い高度を飛ぶようなので、宇宙空間専用のSM-3は無効化させる可能性が高いが、最終段階におけるPAC-3の迎撃は有効だろう。また、日本がSM-6を導入すれば、中間コースでの迎撃も可能となる。
今年に入ってから北朝鮮が発射している極超音速ミサイルは火星12のブースターを使用しているのでおそらくグアムが標的だと思われるが、これも米国がグアムにイージス・アショアを配備することで対処できるだろう。
そして繰り返すように、米国による懲罰的抑止能力は、拒否的抑止能力が少々低下したところで何ら変化しない。
Q. 日本は北朝鮮がミサイルを撃つ度に「遺憾の意」を繰り返すが、どれだけ意味があると思っているのか?
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