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抗酸菌感染part2

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室125.2022.1.30. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 現在、松阪市民病院統括副院長兼呼吸器センター長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php *********************************** 抗酸菌感染part2 抗酸菌感染症、結核でない抗酸菌のことを非結核性抗酸菌症と言う事は以前記載しました。現在、非結核性抗酸菌症と言うとほとんどMAC症のことを考えてしまいますが、30年前は実はそうではありませんでした。 十年一昔と言いますが、30年経つと病気の構成も変わってきます。少し余談になりますが、30年以上前の私が大学生の頃は、肺癌の中で1番多いのは扁平上皮癌(今は圧倒的に腺癌です。)で、非結核性抗酸菌症で最も多いのはMAC症でなくM.Kansasii症と講義で教わり、教科書にもそう記載がありました。また、この非結核性抗酸菌症のことを“非定型抗酸菌症”と言っていました。 今ではM.Kansasii症の患者さんを診察することはほとんどなくなりました。この20年間、松阪市民病院で私が診察した患者さんのうち、M.Kansasii症だった人は5人程度です。“人から人へ伝播することはない”と言われている非結核性抗酸菌症ですが、このM.Kansasii症は人から人へ伝播する可能性があり、抗結核薬が比較的効果がある抗酸菌で、重篤な肺癌や間質性肺炎など合併していた5人の患者さん、全員が除菌することができました。 MAC症が最も多いことは事実ですが(私が診察している患者さんだけで年間50人程度の新患患者さんがいます。)、次に多い非結核性抗酸菌症はM.abscessus症で、ここ10年で急増してきました。感覚的には、年間数人の新患患者さんがいます。教科書や学会的にはかなり難治性で、薬が効きにくいと言われていますが、実際治療してみると意外とあっさり治癒することも多く、重症化する患者さんと比較的簡単に治癒してしまう患者さんと二極化している印象を受けます。まだまだ解明されていないことが多い病気ですが、実際治療してみると、教科書の記載とはかなり乖離があること(必ずしも難治性で無いこと)に気付きました。 COVID -19パンデミックですっかり有名となったPCR検査ですが、抗酸菌感染の診断に用いることもできます。結核やMAC症をはじめとする抗酸菌は、一般的に通常の細菌に比べて発育が遅く、喀痰検査や気管支鏡を用いて気管支洗浄を行なっても結果が出るまでに数週間かかることが多かったわけです。ところが培養の結果を待たなくても喀痰PCR検査を行うことにより、早ければ当日に結核なのかMAC症なのか、おおよその診断が可能となりました。

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