2022年 第 4号
【長尾和宏の「痛くない死に方」】
長尾和宏です。ごめんなさい、何をどう書いていけばいいのかわからぬ
くらいに、埼玉県ふじみの市の立てこもり、在宅医死亡という事件に、
言葉を失ってしまいます。このメールを打つ指も怒りと悲しみで震えて
います。もっと言葉を整理してから書きたかったのですが報道から半日
経っても、心は落ち着かないままです。
いつも、どんな事件であっても…、「被害者は自分といつだって置き換え
可能な存在である」そう想像することはクセになっていました。しかし
今回は、あまりにも自分の立場と近すぎて、平穏な心でそう想像するこ
とさえ、逆に難しいのです。
事件から1日以上が経って…いくつか事件の詳細が出てきました。
容疑者は、犯行動機を警察に「訪問看護に怒り」と話していたといいます。
一体、容疑者と被害者側に、何があったのでしょうか。
僕は、映画【痛くない死に方】の原作となった『痛い在宅医』という本を、
作ったときのことをつい、思い返していました。お読み頂いた方は、理解
していただけるかもしれませんが、あの本は、「誰も悪人ではなかった」の
です。家族を看取ることに心構えのなかった(初めてだから当たり前です)、
過剰な在宅医療への想い、期待……。家で看取れば、絶対に痛くない、苦し
くないお看取りが可能というある種の幻想……僕があの本で言いたかった事
のひとつは、「誰もが在宅が正解」という訳ではない、ということです。
ふじみの市の事件に、何があったかはわかりません。どういう事情でトラブ
が起き、理学療法士さんまでが弔問に行ったのか…今はまだ考えを述べる
には情報が少なすぎます。しかし、どれほどの怒りがあろうとて在宅医に
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)