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高野孟のTHE JOURNAL Vol.535 2022.1.31
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1135》
ブリンケンは「ロシアが来るぞ」「中国も危ない」と騒
ぐだけのオオカミ少年/米国は落ち着いた外交を取り戻
さないと
《参考1INSIDER No.725 2014/03/31》ウクライナ/ク
リミア争乱の深層 ※別送
《参考2 INSIDER No.278 1992/08/15》ロシア人とは何
か? ※別送
【2】《CONFAB No.536》
閑中忙話(1月23日~29日)
【3】《FLASH No.445》
「カネかイノチか」で沖縄の人々の心を踏みにじる自民
党政権/日刊ゲンダイ1月27日付「永田町の裏を読む」
から転載
【4】《SHASIN No.465》
■■ INSIDER No.1136 2021/01/31 ■■■■■■■■■
ブリンケンは「ロシアが来るぞ」「中国も危ない」と騒
ぐだけのオオカミ少年/米国は落ち着いた外交を取り戻
さないと
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ブリンケン米国務長官は国際政治のイロハも知らない
単なるガキで、ロシアが明日にでもウクライナに侵攻を
始めるかもしれないとか、ベラルーシ経由だと侵入しや
すいだろうとか、何の根拠も示さずにペラペラと口先介
入して、ご本人としてはそれがロシアに対する牽制にな
っていると思っているのかもしれないが、いざ本当にロ
シア軍が侵攻したら米国が本格的に軍隊を投入してウク
ライナを防衛するつもりなどないことは分かりきってい
るので、これは馬鹿げた一人芝居である。
このブリンケンに言動に誰よりも迷惑しているのは、
当のウクライナで、同国のゼレンスキー大統領は28日、
キエフで記者会見し、
▼報道機関そのものがパニックを作り出しており、尊敬
される複数の国家指導者でさえ、明日にも戦争になると
言ってくる。これはパニックだ。そのせいで我々の国家
にどれほどの犠牲を払えというのか。
▼ロシアはウクライナを攻撃する計画はないと主張して
いる。28日には、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相が同
国は戦争を望んでいないと発言した。ロシアはウクライ
ナ国境付近に約10万人規模の部隊を動員しているが、昨
春に同様の部隊が集結した時以上の脅威ではない様子
だ。国内情勢の不安定化こそがウクライナにとって最大
の脅威だ。
▼米国や英国などが一部の大使館職員を退避させている
が、外交官は船長のようなもので、沈んでいく船から最
後に離れるべきだ。ウクライナはタイタニック号ではな
いが。
と語った(1月29日付BBCニュース)。その通りで、
私もゼレンスキー大統領やラブロフ露外相と同様、ロシ
アが全面軍事侵攻してウクライナ全土が戦場と化す現実
的な危険など、現時点で存在しないと判断する。なのに
なぜロシアがウクライナとの国境に軍隊を集結させてい
るかと言えば、それはロシアが公言している通り、
(1) ウクライナをNATOに加盟させないこと、
(2) NATOは東欧での軍事活動を終了し、ポーランドとバ
ルト3国のエストニア、ラトヴィア、リトアニアから部
隊を撤退させること、
(3) NATOはロシアに近い国やロシアと国境を接する国に
ミサイルを配備しないこと、
について外交交渉を求めるためである。
●元々存続してはならなかったNATO
米国や日本の報道では、ロシアがこのようなことを求
めること自体が生意気であるかの論調が支配的である。
たぶんブリンケンごときはその歴史的経緯そのものを知
らないのだと思うが、冷戦体制が崩壊して米露が真っ先
に取り組まなければならなかったのは、その体制の実体
的な中心機構であった米欧のNATOと旧ソ連中心のワルシ
ャワ条約機構(WTO)を解消することで、ゴルバチョフ
は1991年3月にWTOを解体したが、米国はそれに対応し
てNATOを解体することを拒んだ。理由は単純で、当時の
米大統領ブッシュ父は、冷戦が終わったということは
NATOにせよWTOにせよ、予め仮想敵を設定してそれに向
かって味方が結束して立ち向かうという国際政治の基本
的な姿が終わったのだということを理解せず、「冷戦で
米国は勝利しロシアを敗北させた。これからは米国
が‘’唯一超大国‘’であり、遮る者もいないやりたい
放題の時代だ」と錯覚した。この米国「に‘’唯一超大
国‘’幻想こそが、その後の世界に混乱に次ぐ混乱を呼
び起こしてきたのである。
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