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第163号(2022年2月7日)ロシア軍集結、ウクライナ軍増強、ベラルーシは非核・中立放棄へ

小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。 【目次】 ●今週のニュース 続くロシア軍集結、ウクライナの兵力増強、ベラルーシは憲法改正で非核・中立放棄へ ●NEW BOOKS Kassenova, Atomic Steppe ほか ●編集後記 猫惚気 =============================================== 【今週のニュース】続くロシア軍集結、ウクライナの兵力増強、ベラルーシは憲法改正で非核・中立放棄へ  昨年以来報じているように、ウクライナを巡っては軍事的危機が日増しに強まっており、緊張の緩和の兆しが一向に見えない。今回はその中でも直近の重要ニュースをいくつか取り上げてみた。 ・ウクライナ周辺のロシア軍は83個大隊戦術グループ(BTG)に 『FOX NEWS』2022年2月4日 <https://video.foxnews.com/v/6295567325001#sp=show-clips>  米FOX NEWSが米政府当局者の談話として2月4日に報じたところによると、ウクライナ国境周辺に展開するロシア軍はさらに増加し、2週間前の60個大隊戦術グループ(BTG)から現在では83個BTGに増加している。  また、さらに14個BTGがウクライナ周辺に移動しているとされ、これらが完全に展開すれば97個BTGとなる。  昨年12月3日の『ワシントン・ポスト』は、100個BTGと支援部隊を含めた17万5000人が揃ったところでロシアが侵攻作戦を始めるという米国政府の見通しを紹介していたが(https://www.washingtonpost.com/national-security/russia-ukraine-invasion/2021/12/03/98a3760e-546b-11ec-8769-2f4ecdf7a2ad_story.html)現状ではまさにこれに近い規模の兵力が集結しつつあるということになろう。 ・ベラルーシに展開しているロシア軍は約3万人とNATO事務総長が発言 『Reuters』2022年2月3日 <https://www.reuters.com/world/europe/russia-has-sent-some-30000-combat-troops-modern-weapons-belarus-nato-says-2022-02-03/>  これに先立つ2月3日、NATOのストルテンベルク事務総長は、「同盟の決意2022」(2/10-2/20)のためにベラルーシに展開しつつあるロシア軍が約3万人の規模であるという評価を示した。  ロシア側は同演習の参加兵力が2011年のウィーン文書で定められた1万3000人の制限以下であるとしているが(https://structure.mil.ru/mission/practice/all/rehimost-2022.htm)、NATO側の評価を信じるならば、実際にはその2倍以上の兵力が展開していることになる。  どちらの言い分が正しいのかは今のところ明らかではないものの、興味深いのは、ベラルーシのルニネツ飛行場にSu-24M戦闘爆撃機が展開していることが衛星画像で確認されたことだ(https://twitter.com/NejdetKaanAksu/status/1487952631469383683?s=20&t=XgJpaBXDdi2EZjfiZAgh7A)。  ロシアはベラルーシにSu-35S戦闘機を展開させたことは明らかにしているものの、Su-24Mについては言及がなく、かといってベラルーシ空軍はこの機種を運用していないためである。この点からして、ロシア国防省が公表している以上の兵力をベラルーシに展開させていることはおそらくたしかであろう。 ・ロシア軍核部隊大演習も間近?  上記のストルテンベルク発言でもうひとつ興味深いのは、今回の「同盟の決意」演習と並行してロシアが戦略核部隊大演習が行われるだろうとしている点である。  第160号で述べたように、ロシアは通常、秋の軍管区大演習後に戦略核部隊の大演習(近年では「グロム」と銘打たれている)を行うが、昨年はこれが実施されなかった。ただ、同演習は中止されたわけではなく2022年初頭に延期されたという未確認報道があり、ストルテンベルクの発言はこれを裏付けるものである。  とするなら、上掲の記事で述べたとおり、ロシアが軍事力行使と並行して「エスカレーション抑止」のための核戦争演習を行うのではないか、という観測(https://note.com/cccp1917/n/ncee38ee7489c)が改めて現実味を帯びてこよう。 ・東部軍管区司令官もベラルーシ入り

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  • ロシアは今、世界情勢の中で台風の目になりつつあります。 ウクライナやシリアへの軍事介入、米国大統領選への干渉、英国での化学兵器攻撃など、ロシアのことをニュースで目にしない日はないと言ってもよくなりました。 そのロシアが何を考えているのか、世界をどうしようとしているのかについて、軍事と安全保障を切り口に考えていくメルマガです。 読者からの質問コーナーに加えて毎週のロシア軍事情勢ニュースも配信します。
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