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もっと敷居を低く

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室127.2022.2.13. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 現在、松阪市民病院統括副院長兼呼吸器センター長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php *********************************** もっと敷居を低く オミクロン株が想像以上の猛威を奮っています。今年の1月初旬、入院する感染者でほとんど高齢者はおらず、自宅療養ができない若年者達でした。しかし現在、若年感染者はほぼ在宅療養となり、入院が必要なのは高齢感染者ばかりとなりました。デルタ株の時、若年者でも重症化し肺炎となる患者さんが多かった印象を受けますが、オミクロン株の場合はそれほど重症化する患者さんはいません。高齢者で一部重症化する患者さんはいますが、超高齢者や合併症がある人です。 そんな中、経口薬としてモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)が上市され、投与できるようになりました。インフルエンザの特効薬として有名なタミフルもそうなのですが、この手のウイルス薬は発症早期の比較的軽症な段階で投与しないと効果はありません。さて、この薬ですが、投与するにはある一定の条件が定められています。まず、発症5日以内の18歳以上の患者さんで、妊娠していないことが条件です。加えて、61歳以上の高齢者もしくは合併症があるなどの重症化リスクが高い人となっています。 果たしてそのような条件に当てはまる患者さんは、どれだけオミクロン株に感染しているのでしょうか。若年感染者の場合、多くの人は合併症がなく、発症5日以内にはほとんどの人が快方に向かっているので、この薬の出番は無いと考えます。稀に重症化して入院する若年感染者は発症後5日以上経過していることが多く、他の薬剤を使うことになり、またこの薬を使う事はありません。 高齢者や重症化リスクがあり入院してくる患者さんは、その時点で5日以上経過していることや肺炎を合併していることが多く、ほぼラゲブリオは使用せずに治療を行います。そう考えると、この経口薬はどのような患者さんに投与することが多いのでしょうか。非常に限られた患者さんにしか使えないように感じます。おそらくですが、61歳以上の元気な高齢者だけがこの薬の対象となってくることが多いような気がします。あるいは少し太った若年者や糖尿病があるなどの患者さんで、入院しなくてもいいような元気で非軽症の人になってくると思います。 結論を言えば、多くの在宅で療養している若年感染者には投与できないわけです。供給量が非常に限られており仕方がないとは言え、そのような在宅で療養している患者さんの症状を少しでも軽症にすること、楽にすることも大切なような気がします。若年感染者の皆さん、経口薬が出たからといってその薬を使用して在宅で治療ができると考えていては間違いです。多くの人は在宅療養で我慢し、治ってくるまで過ごすことになると思います。 投与においても非常に敷居が高く、同意書が必要となっています。ウイルスに使う経口薬は、投与方法が簡便でなければ早期から使用できません。供給量が限られていて敷居が高い今のままだと、在宅療養していても解熱しない状況が続いているような若年感染者には使用できないのです。注射薬は別にして、経口の抗ウイルス薬は本来ならばそのような患者さんにこそ役割を発揮するような気がしてなりません。 もっともっと供給量が増え、COVID-19感染を疑ったらPCR検査を待たずに簡単に使用できるようにならなければ、多くの感染者にとってゲームチェンジャーにはならないような気がします。

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