今週のざっくばらん
Meta(旧 Facebook)が抱える問題点
Metaの株価が、決算発表直後に暴落し、時価総額の下落としては、過去最大のものになったと報じられました。Meta がどんな問題に直面しているかについて、少し深堀して考察したいと思います。
1番の問題点は、Facebook/Instagramなどの既存のサービスに、若いユーザーが獲得できていない点です。これは、SNSの宿命と言っても良いもので、新しいもの好きなティーンエージャーは、Facebook のような「枯れたサービス」には見向きもせず、Tiktokなどの新しいサービスに、刺激を求めて流れてしまうのです。
以前の Facebook であれば、Instagram、WhatsApp を買収したように、若い人たちに人気が出始めたライバル・サービスを「青田刈り」することにより、「SNS業界での No.1 の地位」を維持し続けることが可能でした。しかし、ここまで大きくなり、独占禁止法の観点からの監視が厳しくなった今、Tiktokのようなサービスを買収することは許されないのです。
今回、Meta は創業以来初めて、アクティブ・ユーザーが減少したことを報告しましたが、これは一過性のものではなく、Facebook + Instagram + WhatsApp という三本柱の「ピークアウト」が始まったと考えて良いと思います。
この問題に関しては、Metaは、Instagram に Reels という Tiktok に酷似した機能を追加して対抗しようと試みていますが、私はとても難しいと見ています。若い人たちが Tiktok に惹かれているのは、そこに作られたカルチャーであり、それを Instagram 上に作ることは簡単ではありません。
Meta が本当に必要としているものは、FacebookやInstagramだけでなく Tiktok すら古く見えるような新しい魅力的なサービスですが、それを「企画・設計」することは非常に難しいのです。星の数ほど誕生するベンチャー企業がさまざまな試みを行い、そのうち1つが自然淘汰によりティーンエージャーの間で爆発的な人気を得る、そうやってSNS業界は進歩して来たし、今後もそれが続くのです。
独禁法の縛りにより、ベンチャー企業の買収が出来ないということは、Metaには、その「自然淘汰の果実」を収穫することが出来ないことを意味するのです。
2番目の問題は、Facebook というブランドイメージの低下です。Meta は独禁法だけでなく、プライバシーの観点からも、政府やメディアからさんざん叩かれており、それによるブランド・イメージの低下は、ユーザーのアクティビティだけでなく、社員のモラルにも悪影響を及ぼしています。
これを指摘した記事を目にしたことはありませんが、私は、社名を Meta に変更した理由の一つは、ブランドイメージに傷がつき、かつ、アクティブ・ユーザー数がピークアウトしつつある Facebook をそのまま社名として使い続けるのは賢くないというものだったと解釈しています。
3つ目の問題は、Apple によるプライバシー・ポリシーの変更の代表されるような、ハードやOSやアプリストアのレイヤーでのプラットフォームを Meta が握っていないことに大きなハンディがある、という問題です。
Apple が iPhone と iOS、Google が Android というプラットフォームに加えて、App Store を持っているのに対し、Facebook は彼らが作った土俵の上でしか戦えないため、ビジネス面で大きなハンデを背負っているのです。
この問題点に関しては、Mark Zackerberg も強く認識しており、だからこそ「ポスト・スマホ」候補である VR グラスの Oculus を買収したのだと自ら認めています。
とは言え、VRグラスの市場はまだ立ち上がったばかりで、スマートフォンを超えるプラットフォームになるかどうかはまだ不明です。
4つ目の問題は、社名まで変更した上で発表した「メタバース戦略」の曖昧さです。
Metaは、10月に「The Metaverse and How We'll Build It Together」という1時間超の映像を使って、「メタバース戦略」を発表しました。興味深い技術やユーザー体験満載の映像ではあるのですが、私から見れば、開発者向けのメッセージとしては具体性と説得力に欠け、消費者向けのメッセージとしては魅力に欠ける、残念な出来でした。100点満点で言えば55点ぐらいの出来です。
現在、バーチャルな3Dの世界は、コンテンツごとにばらばらです。Nintendo の Zelda には Zelda の世界観があるし、Fortnite には Fortnite 独特の世界があります。
Zackerberg はそれらを統合して、Metaverse と呼ばれるものを作り、ユーザーは自分のアバターやIDをコンテンツの壁を乗り越えて使えるようにしたいようですが、それは、それぞれのコンテンツの世界観を壊すことに繋がり、開発者たちがそのビジョンについてくるとは私には思えません。
このビジョンの一番の欠陥は、Metaがスマートフォンの世界で取り損なった「プラットフォーマー」のポジションをVRの世界ではなんとしてでも掴もうとしていることを誰もが知っていることで、賢い開発者であれば、そこに危機感を抱いて当然なのです。
そして、この混乱は、Meta社内のエンジニアにも広まっています。最も顕著なのは、「VR OS」の開発責任者だった Mark Lucovsky が Meta を辞めて Google に移籍してしまった件です。辞めることになった理由はどちらからも発信されていませんが、タイミングから考えてて、今回のメタバース戦略と関連していることは間違いありません。
以前にも指摘したと思いますが、VR/ARグラスがもたらすだろう新しい市場・ライフスタイル(これを「メタバース」と呼ぶ人もいます)では、消費者にとって魅力的な「コンテンツ」が鍵を握ります。Star Wars、ハリーポッター、Final Fantasy のようなしっかりとした世界観とブランド力を持つコンテンツです。
だからこそ、Microsoft や Sony はゲーム会社の買収に動いている、と考えれば、Meta も手遅れにならないうちにコンテンツ会社を買収すべきだと私は思います。
Voicy 3週目
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