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【Vol.417】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ問題の構図』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「岸田政権のコロナ対策を問う」 「水際対策」で稼いだ「時間」をどうして使えなかったのかという問題につ いて、2点議論したいと思います。  1つはどうして病床や医療従事者の準備ができなかったのかという問題で す。この点については、今度こそ厚労省と医師会が率直に説明すべきと思い ます。私は彼らを全面的に非難はできないと思います。 「日本の医療従事者の多くは被雇用者であり契約上の兼業は難しい」 「コロナ死は社会的許容できるが、コロナ以外の死亡については医療過誤を 指摘されると医師や病院が破滅する」 「免許業務の拡張も、万が一の死亡例等を突いて世論とマスコミが攻撃する 可能性を考えると規制緩和はできない。何も自分達の経済的既得権を守りた いからではない」  という事情があるのだと思います。そうした問題を、心を開いてしっかり と世論に説明し、その上で政治が責任を持って現実的な対策をしてゆくよう にしなくてはなりません。  問題の所在について知っているはずの共産党までがダンマリというのは、 恐らく医療現場の「労働者の権利擁護」を官僚的な杓子定規でやっているか らだと思いますが、こちらも反省してしっかり改革に参加してほしいと思い ます。  2つ目は、ワクチン行政です。ここへ来てかなり厳しい失敗という状況に なっています。 「副反応が嫌だから、あるいは副反応が出ても休めないから3回目は躊躇」 「特にモデルナはイメージが気になるし、交差接種も怖いので躊躇」  という反応が出る、しかもオミクロンの感染力への恐怖や後遺症への恐怖 を上回るような格好で「躊躇」が出てしまうというのは、完全に失敗です。  勿論、日本の世論の心理の「あや」というのは複雑で、本当に難しいのは 分かります。ですが、8月から9月にあれだけ成功したのに、今回は失敗し たということについては、厳格な反省と立て直しが必要ではないかと思うの です。  海外から見ていますと、実に多くの商談や留学がストップし、更に結婚で きないカップル、家族の死に目に会えないケース、いや家族が死んでも今で も墓参にも法事にも参加できないケースなど、多くの「我慢」が目につきま す。  そうした我慢の結果として、岸田政権は「水際対策」で時間を稼ぐことに よって、「オミクロンの危険度を見極め」「医療体制を準備し」「必要に応 じてワクチン接種の繰上げをする」はずでした。ですが、ほぼこの3つには 完全に失敗しているわけです。これでは何のために国際交流や、在外邦人を 我慢してきたのかということになります。  とにかくコロナ政策の立て直しは必須です。少なくとも、厚労官僚や官邸 では「ヤフコメ」を見るのを禁止して、世論の揺れ動く感情論に振り回され るのを止める、そこから始める必要がありそうです。  ちなみに、立憲民主党の幹事長である西村智奈美氏は、岸田総理が水際対 策の緩和を表明したことに関して、「留学生の入国などについて状況が改善 されるということであればいい面はある」と述べたそうです。同党としては 正常な神経に属するコメントですが、同党が共産党などと一緒に「完全鎖国 でゼロコロナ」などという暴論を掲げていたことへの反省がありません。路 線変更をするには、まずは自分達の非を認めてからやらないと説得力はない と思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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