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【Vol.418】冷泉彰彦のプリンストン通信『新しい資本主義の誤解』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「鉄道運賃問題は大丈夫か?」  斉藤鉄夫国土交通大臣(しかしどうして国交相が公明党の指定席なんでし ょうか?)は2月18日に開かれた会見で、「鉄道運賃・料金制度のあり方 に関する小委員会」について記者の質問に答えたそうです。  この小委員会は、鉄道運賃制度の根幹にある「上限認可制度」をどうする かについて、現在検討を行なっています。この「上限認可制度」ですが、運 賃の上限額については認可制であり、それ以下であれば事業者が事実上自由 に運賃が決められるというものです。  問題は、この「上限」です。これは「鉄道事業法」によって、運賃収入が 適正な原価に適正な利潤を加えた「総括原価」を上回らないとする中で、決 められているものです。ちなみに、現在はほとんどの鉄道がこの上限額を運 賃としています。一方で、コロナ禍といった短期的な問題では、この上限額 は簡単には上げられないようです。  いずれにしても、この上限認可制のために、1999年以降はほとんど鉄 道料金は据え置きとなっています。その結果として、他の公共料金と比べて 鉄道の料金は、低い水準に据え置かれているという見方もあるわけです。  けれども、最近はコロナ禍を受けた乗客減、相次ぐ車内傷害事件にまつわ る警備体制の必要、バリアフリー化、脱炭素化、過疎化など、鉄道事業者を 取り巻く状況が大きく変化しています。ですから、この小委員会は「今日的 視点からの検証が必要である」として進められているのです。  この会見で斉藤大臣は「利用者ニーズに即した、より良いサービスを持続 的に提供できるよう、そのために今後の運賃・料金制度はどうあるべきかに ついて検討する」という安全な答弁しかしませんでした。ですが、同時に夏 までには大きな方向性を打ち出す意向を示したそうで注目がされます。  この問題ですが、非常に厳しい状況だと思います。問題は通勤に関する鉄 道利用の問題です。多くの高齢者は、「通勤定期のカネは会社が出してくれ る」という経験を前提に考えがちですし、現役世代も大企業の正社員の場合 はそうかもしれません。ですが、仮に日本経済がより縮小する一方で、鉄道 料金の値上げが大き過ぎるとどうなるか、非常に慎重に考えないといけない と思います。  1つは、現在もそうですが多くの非正規労働者には満額の通勤手当が出な いという問題があり、これがより厳しくなったりするという問題です。  2つ目は、正社員の場合も通勤手当の満額支給が崩れて行くという問題で す。そうなると、鉄道の路線維持、あるいは郊外の住宅開発も含めて全体的 な都市計画の修正が必要になります。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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