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松尾スズキの【のっぴきならない日常】vol.504 HTML特別版(2/2)

松尾スズキの、のっぴきならない日常
松尾スズキの、のっぴきならない日常 / 2022年2月25日発行 /Vol.504(2/2) 「人生に座右の銘はいらない」 読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします! Q.今の仕事(医薬品メーカー)を選んだ理由もそうですが、学生のころからずっと、誰かの役に立ちたいと思ってきました。それでも、ちょっと気を抜くと、自己中心的な気持ちや基準で物事を判断していることが少なくないです。仕事だけでなく、友達関係でもそうで、ちょくちょく自己嫌悪のループにはまってしまい、抜け出せなくなってしまいます。自己中心的な性格を直すことはできないものでしょうか?(25歳、女性、会社員) A.自己中心の度合いが、どの程度の話か想像がつきませんが、人間、多かれ少なかれ自分のために生き、そして生きる権利があるわけで、それが人にバレバレで嫌われるようでは生きにくいので、矯正しなければならないと思いますが、心の中は自由なので、ぞんぶんに自分中心に考えてください。医療品メーカーに勤めている人だって、金のため! と思って生きている人は多いと思います。ワクチンだって、ファイザーなのかモデルナなのかで企業同士は熾烈に対抗しているでしょうし、 ファイザー社が「やっぱりモデルナのほうが効きがいいので、そちらをお使いください」などという広告は出さないわけです。わたしなんて、24時間自己中心的に生きています。今日も自己中心的に稽古場に行き、自己中心的に稽古を始め、自己中心的に帰ってくるでしょう。だからせめて人当たりは感じよくやっておるわけです。感じよくやっておれば、だいたいセーフです。 しかし、自己嫌悪というのは残って、今日、自分が急にこんなオーダーしたせいで、あいつ居残って仕事してるよなあ、なんて思うと、次の日優しい言葉をかけようか、なんて思います。自己中心的かどうかでなく、優しく生きているかどうか、ずっと考え続ける、というのを自分に課していますし、しかし、まったく忘れているときもあります。 Q.私の仕事は、いまだに商品の受発注などでFAXを多用しています。入社当初は正直、ビックリしましたが、競争相手の少ない業種なので、それでもどうにかなっています。勝手なイメージですが、演劇も古そうな業界の気がしますが、「いまだに!?」「昭和かよ!」みたいなこと、ありますか?(38歳、女性) A.FAXが届くことは、ほぼ皆無となりました。すべてネットで、ワードやPDFのやりとりになります。わりと大人計画もテレワークが進み、ZOOM会議も当たり前になってきて、なんでこれコロナ前からやらなかったんだ、超時間の節約~、なんて思いますが、気のおけないスタッフなどと今日は対面ということになると、せっかく電車に乗ってわざわざ来たんだから、世間話の一つもして帰ろうか、 なんてことになり、そういうときに、ああ、あの演出家コロナになったんだとか、あのスタッフ、やめて実家に帰ったんだ、なんていう情報が知れ、まあ、だからなんだというわけではないですが、「人生って……」なんていうことを考えるきっかけにもなるわけです。手間がかかるほど、人間について考える機会は増えるのかな、という気がします。でも、そんな事ばかり考えてもいられないので、

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  • 有名役者がひしめく「大人計画」を主宰し、芥川賞候補の作家、岸田國士戯曲賞受賞の演出家、現代日本を代表する怪優など、才能が溢れすぎて困っているのに、謙虚な佇まいが魅力的すぎる松尾スズキ。そんな彼のメルマガは、日記、質問&人生相談(もちろん本人が答えます)など読み応えタップリ! これだけのボリュームで月々たったの500円!!
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