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戦争と平和

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室129.2022.2.27. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 現在、松阪市民病院統括副院長兼呼吸器センター長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php *********************************** 戦争と平和 ロシアのウクライナ侵攻が始まりました。 “人類は昔から少しも進歩していない”ということを痛切に感じています。昔から、争い事を解決する最終手段は“暴力”でした。時代が経ち、科学や社会制度が発達した現在さえもその事は少しも変わりがありません。この戦争の記事などを見るたびに痛切にそう思う今日この頃です。 ネアンデルタール人をクロマニヨン人が駆逐し、今の人類は元をたどれば“クロマニヨン人”であることを考えると、その好戦的な性格は今に至るまで少しも変わりはなく、未来永劫これは宿命であるかもしれません。ウクライナに侵攻したロシア軍に対して世界は何をしたのか、経済的な制裁を課すものの、実際軍隊を派遣して守ってあげようとはしていません。最終的に自分の身は自分で守らなければいけないような世界であることも痛切に感じます。 この人類に綺麗事は通用しないのでしょうか。平和な社会であれば綺麗事は通用するし、人類がより平和を愛して生きていけるのかもしれませんが、この世の中から戦争なくす事は不可能なのかもしれません。“やはりこの世界で自由に生きていくためには、経済力や軍事力は必要なのだ”と思いました。 戦争は良い事ではないです。今回は“ダナンラング”のことを話したいと思います。ベトナム戦争の最大の激戦地の1つ“ダナン”でのことです。負傷する米軍人も多く、多量の輸血が準備されていました。実際、戦争で負傷して多量の出血があった兵士に対し、止血処置と輸血が行われて多くの兵士が救命されました。一命を取り止めたのも束の間、多量に出血した兵士たちが、次々と呼吸困難となり亡くなっていきました。 多量の出血があると人間はショック状態に陥ります。出血によりショック状態になると、止血をして輸血を行うのですが、それだけでは充分ではありません。輸血によってショック状態を脱したとしても、しばらくすると肺が真っ白になります。多くの兵士が出血後に呼吸不全を来して亡くなっていったので“ダナンラング(ダ・ナン肺)”と呼ばれるようになりました。 今ではこの現象は、出血後の急性呼吸緊迫症候群(ARDS)としてよく知られていることです。人間が出血によりショック状態になったときには輸血するだけでは充分ではありません。その後のARDSを乗り越えるためには、呼吸器機管理やステロイドなどの投与、感染症対策が必要になります。

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