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週刊 Life is Beautiful 2022年3月15日号:ソニーとホンダの提携

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん ソニーとホンダの提携 先週、ソニーとホンダが電気自動車を開発・販売する新会社を共同で作ることを発表しました(ソニーとホンダ、EVを共同開発・販売する新会社設立 2025年にEV販売開始へ)。この件に関しては、読者の方々から複数の質問が来ていましたが、質問コーナーで答えるには少し長くなるので、ここで私なりの解説をします。 発表の要点を箇条書きにすると、以下のようになります。両者合弁の新会社を今年中に設立する新会社は高付加価値の電気自動車を開発・販売するモビリティ・サービスの提供と併せて事業化する電気自動車の発売は2025年を想定しているホンダが自動車の開発力、製造技術、アフターサービスなどを提供ソニーはイメージ・センシング、通信、各種エンターテイメントを提供初期モデルについては、ホンダが車両製造を担うモビリティ・サービスはソニーが開発し、新会社に提供 最初に結論を言うと、この提携は両社にとってとても良い提携であり、期待しても良いと思います。成功(=電気自動車業界で意味のあるシェアを持つ会社に育てること)は簡単ではありませんが、ホンダにとっては最適解、ソニーにとっても悪くない選択肢だと思います。 特にホンダは、トヨタ自動車と同じく、水素自動車に大きな投資をしていたこともあり(ホンダは去年、水素自動車から実質的に撤退することを発表しました)、電気自動車に関して、Tesla にはもちろん、GMやフォルクスワーゲンと比べても大きく出遅れてしまっています。 ホンダのブランド力は過去の栄光を失っており、Teslaが業界全体に巻き起こした急激なEVシフトが、業界の勢力図を大きく塗り替える中で、このままではホンダは存続が危ぶまれるような状態に追い込まれることは明らかでした。 一方のソニーは、2020年のCESで「VISION-S」と呼ばれる試作車を発表2021年のCESでは、公道を走れる試作車を発表2022年のCESでは、遠隔自動運転機能やSUV車「VISION-S 02」を発表 と着実に駒を進めて、ソニーが電気自動車・自動運転車の時代に向けて、重要な技術(各種センサーや画像処理技術)のサプライヤーとなることを印象付けて来ました。 業界関係者をさらに驚かせたのは、1月にソニー自身が「EVの市場投入を本格的に検討」する事業会社としてソニーモビリティという会社を設立すると宣言したことです。この時点で、私も含めて、多くの人たちは、ソニーは製造のみ別の会社(マグナ・インターナショナルなど)に委託し、ソニー自身は、それをロボタクシーのような形でサービスとして提供するのではないかと予想していました(ソニーのEVはどうなるのか。リカーリングという「必然」)。 しかし、ソニーがそんな形で自動車業界に進出するのには大きなリスクが伴います。Elon Musk がしばしば指摘するように、プロトタイプまでは比較的簡単に作れますが、大量生産をしてちゃんと利益を上げることは簡単ではありません。自動車の製造に全く経験のないソニーが、ゼロから自動車ビジネスを立ち上げるのは簡単ではありません。 それに加えて、ソニーは複数の異なる業種のビジネスを持つコングロマリットであることを株主から批判されており、今からリスクの高い自動車ビジネスをソニー本体として立ち上げることに、株主から賛同を得られるとは考えられません。 そう考えると、ソニーにとってもホンダとの提携は理にかなっているし、お互いに不得意な部分を補い合うという意味では、両社にとってとても良い提携のように思えます。 ちなみに、私の会社(Xevo Inc., 2019年にLEARに売却)もホンダとのビジネスをしていましたが、当時は、ソフトウェアの話がなかなか通じず、苦労していたことを覚えています。 唯一の救いは、ホンダが2019年にDrivemodeというソフトウェア・ベンチャーを買収したことです(ドライバー向けスマートフォンアプリの開発会社 Drivemode社を完全子会社化)。

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