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松尾スズキの【のっぴきならない日常】vol.507(2/2)

松尾スズキの、のっぴきならない日常
_________________________ / 2022年3月19日発行 /Vol.507(2/2) _________________________ 「人生に座右の銘はいらない」 読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします! Q.藤本有紀さん脚本の朝ドラ『カムカムエブリバディ』が最高に面白いです! そんな藤本さんに舞台脚本を頼んだ松尾さんの慧眼に、改めて驚かされます。日記で出てきたことがないので、お忙しくてご覧になれてないのかもですが、松尾さんの感想、聞いてみたいです。あと、藤本さんの魅力についても聞いてみたいです!(44歳、女性、会社員) A.藤本さんは、果敢に笑いを取りに行くところが素敵です。しかも、ちゃんと必然性のある笑いで、シュールとかナンセンスとかではないけど、エスプリが効いているというか。『カムカム~』は正直、前半を『パ・ラパパンパン』にかかりっきりで観れてないので、いずれまとめて観ようかなと思います。ああいうものは、一気に観たほうがよさそうです。 『パ・ラパパンパン』の執筆が思うように進んでいない頃(あの頃、藤本さんはドラマの締切とも戦っていて本当に苦労していました)、藤本さんが執筆する横で、ただそれを見ている、という時間がけっこうありました。あの時間は、わたしも生きてきてこれまでないひとときで、妙に思い出深い、藤本さんにとってはたまったもんじゃないだろうけど、自分の目の前で物語が紡がれていくさまを見ているというスペシャルな気持ちで、とても不思議だったのをよく覚えています。はやく、お互い落ち着いて、ゆっくり飲んでもみたいです。 Q.このたび友人が結婚することになったのですが、結婚式を挙げるかどうかでケンカになっているそうです。彼女は親族だけでも呼んで挙げたくて、彼(私の友人)は反対しているようなのですが、たしかにコロナ禍ですし、男の僕としても「やめておいたほうが…」と思ってしまいます。松尾さんは挙式経験者ですが、もしご自身がいま結婚式を挙げる・挙げないの局面だとすれば、どうされますか?(31歳、男性) A.一度目の結婚のときは式を挙げなかったわけですが、二度めは一度目にやってないことをやろうキャンペーンだったので、あえて盛大にやってみました。まず、大竹しのぶさんが祝辞という流れで、そうとう緊張しました。新郎……いや、リバイバルという意味では、シン・郎というのに、酒をガブガブ飲んでました。シラフでは、あの有名人たちを前に、あんなきらびやかな席にいられません。やはり祝いの席には酒が必要、と、わたしなんぞは思ってしまうわけです。コロナ禍でも、星野をふくめ知り合いが何組か結婚しましたが、実際に式を上げたのは二組ほど、出席者は酒も飲めず、めでたいんだけど微妙、という感じ。なんだか結婚式には、人がシラフでいられないなにかがあるようです。だから、いずれにせよコロナが終わってからでいいんじゃないでしょうか。それか親族だけで、うちうちのお祝いをやるか。 Q.この春の人事異動で、とある部署を任されることになったのですが、そこで初めて女性の部下を持つことになります。なにかとハラスメントばかり強調される昨今ですし、正直、緊張しかしていません。松尾さんは、演出家や映画監督として女優さんに限らず、制作的な女性などに指示や要求をされると思うのですが、そのときに気を付けていることはありますか?(38歳、男性、会社員) A.まあ正直、「はい、目の前でキスして」とか言わざるをえない仕事って、ハラスメントの線引きが難しいですよね。『恋の門』のときも、撮影準備(とても準備に時間のかかる組でして)の間に、龍平と若菜ちゃんに「別室でキスシーンのリハーサルしといてもらえる? 俺の前じゃ恥ずかしいだろうし」と言ったものの、別室で二人きりでキス、って「ただのキス」じゃないか! と、ハラハラしたのを思い出します。『108』のときは、AV女優さんを大量に呼んでファックシーンをたくさん撮ったのですが、中には「え? 前張りって、しなくちゃだめですか?」とか「え? ほんとに入れなくていいんですか?」みたいな方もいて、とはいえ普通の女優さんとのファックシーンもあるので、どこまで気を遣っていいのか、線引きがあやうくなることもしばしば。やはり、気の遣い方にマニュアルはなく、TPOに合わせてやらなければならず、「なにがハラスメントか?」っていうのは、要所要所で心をアップデイトしながら押さえていかなければ、某映画監督みたいに、いきなり色々暴露されて強制終了してしまう、という話です。 Q.自分の空っぽさが本当に嫌いです。昔から友達と会話していても、いろいろ考えているうちに何も言えなくなり、大人になってからも会議で意見も言えず、ただの無口な暗いヤツとして生きてます。私が松尾さんのことが好きだなんて、誰も知りません。彼氏なんて、できたこともないし、この先も誰かが自分を好きになるなんて考えられません。こんな私でも前向きになれる方法は、あるのでしょうか? (30歳、女性、派遣) A.好きでいただいて、ありがとうございます。ただ、「松尾好き=変態」という図式も世の中にはあるようで(不本意ですが!)、いずれにせよ公言はしないほうがいいみたいです。あなたは空っぽではないと思います。思いが溢れて整理できなくて訥弁になることは、わたしにも多々あります。先日も『命、ギガ長ス』上映会で4回もトークショーを行ったのですが、おのれの話の下手さにげんなりしました。1の質問に答えようとして、2のことを考えている内に1の質問がなんだったかを忘れてしまうのです。情けないです。あなたはきっと、文章でものを考えるほうが得意なんでしょうから、SNSを活用して、どうにか世界を広げられないでしょうか。noteなんていうので自分の考えを披露している方もいるじゃないですか。現代が、自分が上京して一人も友達のいなかったあの頃だったら、わたしはきっとそういうものを活用して孤独を癒やしていたと思います。

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  • 有名役者がひしめく「大人計画」を主宰し、芥川賞候補の作家、岸田國士戯曲賞受賞の演出家、現代日本を代表する怪優など、才能が溢れすぎて困っているのに、謙虚な佇まいが魅力的すぎる松尾スズキ。そんな彼のメルマガは、日記、質問&人生相談(もちろん本人が答えます)など読み応えタップリ! これだけのボリュームで月々たったの500円!!
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