━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高野孟のTHE JOURNAL Vol.541 2022.3.21
※毎週月曜日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《目次》
【1】《FROM THE EDITOR》
闘病近況報告4(高野 孟)
【2】《INSIDER No.1143》
「対自化」して自分を客観視する/ウクライナ情勢を理
解するための〈頭の体操・その2〉
《資料1》プーチンの2022年2月21日ビデオメッセージ
《資料2》プーチンの2022年2月23日記者会見
※資料1、2は別配信します。
【3】《INSIDER No.1144》
北朝鮮による拉致問題はなぜ解決しないのか
──小泉訪朝から20年にあたって(有田芳生)
■■ INSIDER No.1143 2022/03/21 ■■■■■■■■■
「対自化」して自分を客観視する/ウクライナ情勢を理
解するための〈頭の体操・その2〉
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
日本を含む西側世界は、根こそぎウクライナ市民への
同情と支援に傾いていて、NHKニュースでは日本の山奥
の小学校の生徒たちが平和を願って千羽鶴を折り現地に
届けようと健気な取り組みをしている挙国一致的な風景
までが流されている。
ウクライナの民間人死者は3月19日現在、約800人と
も2000人以上とも言われ、避難民は1000万人近くに上っ
ているとされており(こういう時の常で正確なことは分
からないが)、一刻も早く停戦を実現してこれ以上増え
るのを止めなければならない。そのことが最優先の課題
であることは言うまでもないが、さてそこで一拍置いて
考えてみて、停戦はどうしたら実現するのか。
■プーチンは頭がおかしいのか?
西側世界は、もともとヒトラーのような極悪非道の独
裁者であるプーチン露大統領が、さらに頭がおかしくな
るかどうかして、突然、一方的にウクライナに侵略を開
始したーーという米国製の認識枠組みに立っている。そ
れで行くなら、停戦を実現するのも一方的にプーチンの
責任であり、彼を説得するか、屈服させるか、失脚させ
るか、暗殺するか何かしてそれを強要するしかない。
ところがロシア側から見れば、別配信の2つのプーチ
ンの重要演説を読めば明らかな通り、事は「突然」でも
「一方的」でもなく、ましてや彼の「頭がおかしく」な
った結果でもない。2014年のキエフのクーデター直後か
ら始まったウクライナの内戦状態の中で、最東部ドンバ
ス地方のロシア系市民の比重の大きいドネツクとルガン
スクの2州で戦闘が激化し、独立してロシアへの併合を
求める住民投票も行われたが、プーチンは(クリミアの
場合とは峻別して)それを押しとどめ、彼らがあくまで
もウクライナ国家の内で一定の自治を実現すべきとし
て、14年9月にウクライナ、ロシア、両州の4者による
「ミンスク議定書」を結んだ。しかしこれは双方の違反
で破綻し、その後何度も停戦合意に至りながらも(一説
には29回!)成功せず、この事態に至る前でも、攻撃用
ドローン、重装備、ミサイル、大砲、および多連装ロケ
ット砲などでドンバスが爆撃されない日は1日もなく、
民間人の殺害、封鎖、子供、女性、高齢者を含む人々へ
の虐待は容赦なく続いている(下記プーチンの2月21日
メッセージでの言い分)という状況があった。
●解決策はどのへんに?
これを断つには、8年間求め続けてきた2州の自治を
保証する新制度の構築をついに諦めてそれらの独立を認
めざるを得ず、そうなると当然激化する両州と周辺での
戦闘に対処することになるが、キエフを占領してウクラ
イナ政府を倒すような真似はするつもりはない。それ
が、プーチンがこれを「特殊軍事作戦」と呼んだその特
殊の意味合いである。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)