■「頼る」スキルの磨き方
人には頼るべきだ。そのスキルは社会人にとって重要な能力だ。だが、
「手伝ってほしい」と頼みごとをしたり「助けてほしい」とお願いし
たりすることが苦手な人は多い。日本人は、特にその傾向がある。
理由は「人に頼る」ことは“相手に申し訳ないこと”だと思うからだ。
なるべく避けるべきだと考える人が多いのだ。そもそも、社会には自
己責任論が強く、お願いしづらい雰囲気もある。
だが、これからは多様性の時代だ。弱音を吐きやすい社会、誰もが困
っていることを打ち明けやすい社会にしていくべきだ。当たり前に助
けを求めあえる環境こそ理想的なのだ。
★
人から助けられることを良しとする力が「受援力」だ。社会人に必要
なスキルの一つだが、学校でも、社会でも教えてもらえない。そもそ
も「頼る」行為は、性格や気質に委ねられている。
「受援力」は「頼るスキル」だ。今は、リモートワーク全盛で、入社
したばかりの社員が、自宅で孤独に働いているケースもある。そうい
う時も、このスキルで助けられることは多い。
「頼る」ことは「つながる」ことだ。頼れば、自分だけでは到達でき
ないところまで連れて行ってくれる。「頼る」ことは、生まれ持った
性格ではない。学んで身に着けるスキルなのだ。
年を重ねるほど、チャレンジすべき出来事は増えるものだ。社会に出
て間もない社会人や学生など、若い世代にとっては、なおさら受援力
が必要だ。未来を切り開くお守りになるからだ。
その若者も、ベテランになれば、気力や体力が衰える。大きなピンチ
に直面して途方に暮れることもある。そんな時も「受援力」が身につ
いていれば、心強いはずだ。
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楽しくなくても笑顔でいれば明るい気持ちになれる。同様に、まず言
葉や態度を変えるべきだ。そうすれば「頼り上手」に近づける。考え
方を変えてから言葉や態度を変えるわけではないのだ。
単に「言葉や態度を変える」といっても、もちろんトレーニングは必
要だ。ただ、難しいことではない。もともと人間には受援力が備わっ
ているのだ。安心していい。
まず、自分の受援体験を思い出すべきだ。困った時、誰かに助けても
らった時のことを思い出す。自分の心細さや不安、相手への感謝の気
持ち、相手を大事な存在として覚えていることに気づくはずだ。
また、自分が誰かを助けてあげた時のことを思い出すことだ。力にな
ったことで、面倒だった、負担だったと思うより、役に立てた喜びや
誇らしい気持ちのほうが強いはずだ。
誰でも、人から頼られれば自己肯定感が高まる。人間はそのようにプ
ログラミングされている。人類が役割分担しながら文明を築いてきた
根底には「人の役に立つと嬉しい、幸せ」という本能があるのだ。
★
自分の受援力に気づいたら、次に受援力を磨く。ポイントは、相手に
自分の持つ3つの感情、すなわち「敬意」「存在承認」「感謝」を順
番に伝えることだ。
まず「敬意」だ。頼む時は、尊敬・敬意を示してからだ。「あなただ
から頼れる」「あなただから相談したい」と個人への敬意を示すのだ。
その際、相手の名前を呼び「今いいですか」と相手の都合に配慮する。
次に「承認」だ。相談する前に「聞いてくれて嬉しい」「助かりま
す」「あなたがここにいてくれてよかった」と相手の存在を承認する
のだ。
最後に「感謝」だ。相談したら、相手が答えを持っているかどうか、
力になってくれるかどうかにか、自分の悩みが解決するかどうかに関
係なく、可能な限り感謝と喜びを伝えるべきだ。
相談を聞いてもらえた、そのことだけでもありがたいという感謝の気
持ちを示すのだ。慣れて自然と口に出てくるようになるまで、この3
つのステップを意識して、頼みごとをしてみるべきだ。
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