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高野孟のTHE JOURNAL Vol.542 2022.3.28
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《FROM THE EDITOR》
闘病近況報告5(高野 孟)
【2】《INSIDER No.1145》
歴史の物差しの当て方で視点が変わる/ウクライナ情勢
を理解するための〈頭の体操・その3〉
【3】《FLASH No.448》
「政府最高レベルの無恥」安倍晋三元首相が核共有を言
い出す茶番/日刊ゲンダイ3月24日付「永田町の裏を読
む」から転載
【4】《SHASIN 467》写真館
■■ INSIDER No.1145 2022/03/28 ■■■■■■■■■
歴史の物差しの当て方で視点が変わる/ウクライナ情勢
を理解するための〈頭の体操・その3〉
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ロシアのウクライナ軍事侵攻から1カ月が過ぎた。そ
の最初の1週間ほど、例えばNHKは毎回のニュースのト
ップに必ずこれを取り上げ、プーチンが「突然」「一方
的に」「侵略」を開始したと、同じ文言を執拗に繰り返
し、彼がいかに悪逆非道の無法者であるかの印象を全国
民に植え付けるのに大いに貢献した。
●「侵略」には違いないとして
確かに現在のウクライナは歴とした独立国であり、そ
の国境を踏み越えて軍隊を送り込んだロシアの行いは明
明白白の侵略である。そんな国際社会の常識のイロハも
無視するとは「きっとプーチンは頭がおかしくなったに
違いない」というのが西側に多い解釈で、そこで狂った
ような侵略者というヒトラーのイメージとの重ね合わせ
も説得力を増す。
それに対してプーチンが「そんな単純な話ではないん
だよ」と、改めて内外にウクライナという国のそもそも
の成り立ちから説明を試みたのが、2月21日の彼のビデ
オ・メッセージ(前号《資料1》参照)であり、さらに
遡れば、21年7月の論文「ロシア人とウクライナ人の歴
史的一体性について」である。
★論文:クレムリン発表の英語原文のウィキソースによ
るミラー:
https://bit.ly/3uyliZR
ウクライナに限らず、旧ソ連を構成した16の共和国は
いずれも、1917年の革命後にレーニンとスターリンが葛
藤しつつも作り上げた、言わば人工的な擬似国家であ
る。旧ソ連全体が共産党の一党独裁を骨格とした強固な
中央集権体制であるにもかかわらず、各地の民族独立派
をなだめて従わせるために形ばかりの主権国家の体裁を
与えるという、プーチンに言わせれば「狂気の沙汰」の
奇型的な連邦制度が生まれた。
プーチンはこの中で触れてはいないが、1945年の国連
創設に当たって、旧ソ連のうちロシア、ウクライナ、ベ
ラルーシの3国が原加盟国となるというのは全く訳の分
からない話で、当初旧ソ連は連邦下の16共和国を加盟さ
せようとしたが、米国に「それなら我が国は49の州をす
べて加盟させるぞ」と凄まれて、「では3国だけでいい
や」と引き下がった結果だという。しかし、なぜこの3
国なのかと言えば、特にロシア人が「東スラブの3兄
弟」こそが旧ソ連の中核でなければならないというこだ
わりを抱いているからという、全く非合理的な理由しか
見当たらない。出鱈目なのである。
●ロシアとウクライナの100年の因縁
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