今回は、2022年4月6-7日にスウェーデンのストックホルムで開催される国際会議「粉々になる質料形相論」Hylomorphism into Pieces で発表する予定の原稿の邦訳を速報としてお送りします。僕としては、久しぶりの新作であり、従来にまったくなかった議論だという自信をもっている一本です。
これまでにも国際会議での発表の邦訳版を数多くお届けしてきましたが、今回は国際会議での発表前に配信することとなりました。このメルマガの読者の皆さんが、世界で最初にこの物語を目にする最初のひとりとなるのです。
「ヤーコプ・シェキウスと原子論者アナクサゴラスの伝説」
1. はじめに
物質の始原的な単位である原子は、すべてが同一の基体を共有し、大きさと形状だけが異なると想定されてきた。しかし原子の無秩序な離合集散だけでは、高度に複雑な動植物の形成を説明できない。これは、くり返し主張されてきた原子論にたいする主要な批判のひとつだ。
この批判を回避するひとつの方法は、原子そのものや少数の原子群の内部に特別な機能や力を認めることだった。まさにこれが、初期近代のヨーロッパにエピキュロス流の原子論を復活させたことで知られるフランスの自然哲学者ピエール・ガッサンディ(Pierre Gassendi, 1592-1655)が採用したものだ。
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