好酸球性肺炎？

ドクター畑地の診察室134.2022.4.3 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います！おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者（肺癌、喘息、COPD、肺炎など）を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説＆ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信！ https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身　自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 2022年4月より松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け！radioを聴いてらんらんらん（lung lung lung）」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 好酸球性肺炎？ 人間の血液にはバイキンと戦う白血球という細胞があります。白血球の中には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球があることが知られています。 さて、この好酸球ですが、通常全白血球の2％程度、白血球は1mlの血液当たり6000個程度なので、通常だと1mlの血液当たり120個程度あることが知られています。 元々、この好酸球は、人間が寄生虫と戦う時に非常に大きな役割を果たす細胞として知られていましたが、寄生虫感染が殆どなくなった現在日本においては、善玉としての役割よりも、むしろ悪玉としての役割が取り沙汰されています。この好酸球が増えすぎると、いろいろなアレルギーの原因になるわけです。一概には言えませんが、一般的に1mlの血液あたり300個以上あると好酸球が増えている状況と認識されることが多いと思います。 喘息の患者さんは、特にアレルギーが原因で喘息になることが多く、一般的にこの好酸球が非常に増えていることが知られています。難治性の喘息で好酸球が増えている患者さんには、この好酸球の産生を司るIL-5という物質をブロックしてしまうような抗体の注射を打つことにより、喘息の病態を改善することが可能です。 この好酸球は喘息以外にもいろいろなアレルギーの原因になります。例えばアレルギー性鼻炎であったり、アトピー性皮膚炎や鼻茸の患者さんにおいて、好酸球が増えていることが知られています。また、抗生剤に反応しないような肺炎の中には、好酸球が増多することによって起こってくる好酸球性肺炎という肺炎があります。 好酸球性肺炎の治療としては、経口のステロイド薬を使用することが多く、多くの患者さんにおいてはステロイド使用により改善するが、非常に再発が多いのが特徴となっています。 最近我々の病院に、この好酸球性肺炎を繰り返してステロイドを使用すると良くなるものの、中止するとすぐに悪化すると言うことを何年もの間繰り返している患者さんが紹介されてきました。好酸球性肺炎は原因がはっきりしないことも多いわけですが、何らかの理由で好酸球性肺炎をきたしていることもあります。例えば好酸球性肉芽腫性血管炎という難病においても好酸球性肺炎を発症します。また、初めて喫煙した若年者などにおいては、急性の好酸球性肺炎が発症して呼吸不全になることもしばしば経験することです。