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/ 2022年4月8日発行 /Vol.510(2/2)
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「人生に座右の銘はいらない」
読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします!
Q.4月から大学生活が始まります。岩手出身の自分には、右も左もわからない横浜での生活です。不安です。松尾さんは大学に入ったときや、就職で東京(印刷会社?)に来たときの不安をどう乗り越えられましたか?(20歳、男性、学生)
A.わたしの場合、生きていくために必死で、上京への不安はもちろんあったのですが、それはいつのまにか、自分はこのまま生きていけるのだろうかという不安に乗り替わっていました。なにしろ一年、仕事が続かなかったもので。一応、失業保険というものがあって、3か月は暮らしていけるのだけど、失業保険が出るまでにも3か月はかかるのです。その間、どうして食いつなごうか、とか。お金の不安に比べれば、上京の不安なんていうのは、いつの間にか忘れてしまいます。
なにしろ日本語は通じます。地下鉄のエスカレーターの長さにはビビりますが、あとは概ね大丈夫です。最近の東京では、ボランティアによる炊き出しも頻繁にやっているみたいだし、そういう情報にちゃんとアンテナ張っていれば、最低限、東京では食うには困らないみたいで、そういうの、あの頃の自分に教えてあげたいくらいです。でも退職後、芝居でなんとかなろうという夢ができたので、ご飯と納豆、とかの夕食で20代後半までは、ぜんぜん平気でしたけど。夢の力って、信じるに値するものかも知れません。
Q.最近、配属されてきた部下が、こちらの指示や指導に不貞腐れた顔をするのが気になります。言われたあと、対応しないわけではないので怒るに怒れないのですが、こちらも人間なので、イヤな顔をされると、やっぱりヤル気がなくなってしまうのです。松尾さんは演出家として人に指示することがお仕事でもあると思うのですが、相手のリアクションでいやな気持になることはありませんか?(42歳、男性、会社員)
A.そりゃあ、スーパーなんかで、なんでそんな不快な感じで接客できるの? という疑問が生まれる場合もあります。やはり20歳過ぎたら、人間、おのれの表情にも責任が発生すると思うのです。どういう気分で、そんな嫌な顔できるのかと、聞いてみたらいいんじゃないでしょうか。
それなりの理由がほしいですよね。ただ、自分ではまったく気づかなかったのですが、就職活動をしていたとき、面接官に「暗いね」「根暗って言われない?」などと目付きの悪さを何度か指摘されて、もちろん最大限の社交性を発揮しているつもりだったので、まあまあ傷ついた記憶もあります。逆に、そういう意味のことを若手の俳優に言ったことって、自分にもあるかもしれません。顔つきを商売にするので仕方ない部分もあるのですが。まあ、聞き方、ですよね。今ならパワハラになるかもしれません。パワハラの概念も時代によって変わりますから、迂闊な発言は怖いです。他人のリアクションは、おのれの鏡、という場合もあります。あなたへの怯えが、そういう表情をさせている可能性もじゅうぶん考えて確認を取ったほうがよいのかな、と。
Q.音楽を配信で聴くようになってから、CDジャケットで購入していたときのような「偶然の出会い」が本当に減りました。これは書店で本を買っていたころ(いまは、ほとんどAmazonです…)、平置きの知らない作家さんの本をふと手に取っていたのも同じだと思います。松尾さんは、最近、カルチャーとの偶然の出会い、していますか?(44歳、女性、主婦)
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