■■ INSIDER No.1148 2022/04/11 ■■■■■■■■■
NATOはなぜ今もこの世に存在しているのか?/ウクライ
ナ情勢を理解するための〈頭の体操・その5〉
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本シリーズの第3回(INSIDER No.1145)「歴史の物
差しの当て方で視点が変わる」で、プーチンが少なくと
も2014年9月のミンスク合意からの8年間を一連なりの
政治プロセスと捉え、(この選択がよかったのかどうか
は別にして)今それに彼なりの決着をつけようとしてい
るのに対し、西側はせいぜい長くても昨年10月に軍事的
緊張が高まり始めた頃からの短い物差しで事態を計測
し、「突然」「一方的に」「侵略」と言い続けていて、
そこがそもそも噛み合わないことを指摘した。
◆冷戦後31年間も経ったのに
しかし本当のところロシア側が本質論的なレベルで問
題にしている歴史の物差しはもっと長くて、1989年12月
のマルタ島でのゴルバチョフ=ソ連共産党書記長とブッ
シュ父=米大統領との会談で冷戦の終結が宣言され、そ
れに即して旧ソ連は率先、東側の軍事同盟である「ワル
シャワ条約機構(WPO)」を91年7月に解体したにもか
かわらず、米国を筆頭とする西側は今なお「北大西洋条
約機構(NATO)」を解体していないばかりか、それを旧
東欧から旧ソ連諸国にまで拡大し、すでにバルト3国を
加盟させたのに続いてジョージアとウクライナも条件が
整えば加盟を認めることを決定しているという、「冷戦
後31年間」の物差しである。
これをロシアの側から見れば、冷戦が終わり東西両陣
営が総力を挙げてぶつかり合うような大戦争は起こり得
ないのだから、そのための戦争機構であるWPOを解体す
るのは理の当然で、米欧も同じようにすると思い込んで
いた。ところがそうしないばかりか、どんどん東方に拡
大し、ついにロシアと国境を接する国々までNATOに組み
入れてきた。米欧にとってロシアは再び「敵」となり、
NATOはそのロシアの喉元に突きつけられた剣となって皮
膚に食い込み始めている。
◆ミアシャイマー教授の見方
これは決してロシアの被害妄想などではない。たとえ
ばフランスの文明批評家エマニュエル・トッドは『文藝
春秋』5月号巻頭論文「日本核武装のすすめ」で要旨こ
う述べている。
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