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春名幹男氏:核戦争と第三次世界大戦の可能性が高まっていると考えられるこれだけの理由[マル激!メールマガジン]

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マル激!メールマガジン 2022年4月13日号 (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/) ────────────────────────────────────── マル激トーク・オン・ディマンド (第1095回) 核戦争と第三次世界大戦の可能性が高まっていると考えられるこれだけの理由 ゲスト:春名幹男氏(ジャーナリスト) ──────────────────────────────────────  ロシアのウクライナ侵攻の出口が見えなくなっている。  和平交渉の進展とロシア軍の首都キーウからの撤退で、事態が収束に向かい始めたかもしれないとの淡い期待を抱いたのも束の間、ロシア軍によるものと見られる民間人に対する数々の殺戮行為が明らかになり、また首都周辺からの撤退もどうやら単なる部隊の再配置だったことが明らかになってきたことで、2月24日の軍事侵攻から1か月半を超えたウクライナ戦争は長期化の様相を呈し始めている。  既にウクライナ各地では一般市民に甚大な被害が発生しており、それだけでもロシアによる軍事侵攻は許されざる国際法違反だが、戦況がプーチン大統領が当初、期待したような短期で決着が付くものにならなかったことで、新たな、そしてより重大な懸念が現実のものとなってきている。ロシアによる核兵器の使用と、それが第三次世界大戦を引き起こしかねない可能性だ。  CIAなどによるインテリジェンス(諜報活動)に詳しいジャーナリストの春名幹男氏は、バイデン政権はプーチン大統領が核兵器の先制使用に踏みきる可能性を真剣に警戒しているという。アメリカがロシアの核使用を懸念するのにはそれなりの根拠がある。それはロシアがソビエト連邦の崩壊後、NATOの東方拡大に対抗して「使える核兵器」の開発を進めてきたからだ。 そして、ロシアがそのような兵器を開発してきた最大の理由は、ロシアの周辺国でNATOとの間で紛争が発生した時のためだった。まさに今回のような事態を想定して、ロシアは使える核兵器の開発を進めてきたのだ。  もう一つ懸念されるのが、現在のロシアの核ドクトリンが、核の先制使用を否定していないことだ。皮肉なことにソ連解体前、通常兵力でワルシャワ条約機構がNATOを大きく上回っていた時代は、当時のソ連は核の先制使用を否定していた。逆に兵力の劣るNATOが、核の先制使用の権利を留保していたのだ。  しかし1991年のソ連崩壊以降、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの旧東欧圏が相次いで加盟するなどしてNATOが東方に拡大していくと、東西のパワーバランスが明らかに崩れる。 それに対抗してロシアは核ドクトリンを変更し、核兵器を先制使用する戦略を採用するようになった。ロシアの核ドクトリンは1993年以降、順次強化され、2020年に更新された最新のドクトリンでは、ロシアが核攻撃を受けた場合やロシアの国家としての存続が危ぶまれるような事態を迎えた場合に加え、ロシアが弾道ミサイルの攻撃を受ける恐れがある場合やロシアの核攻撃能力が影響を受けるような攻撃にあった場合に、ロシアは核の先制使用をする用意があることが記されている。  現在のウクライナ情勢では他国に軍事侵攻したのがロシア側なので、ロシアに有利な戦況にならないと中々和平交渉は進展しないと見られている。もしくはロシア軍が完全に敗北し、逃げ帰るパターンしかない。しかし、それでは恐らくプーチン体制は持たないと考えられており、プーチン大統領がそのような形での撤退を認めるとは考えにくい。  戦況がいよいよロシアにとって不利になった時、プーチン大統領が撤退か核兵器の使用の二択を迫られる可能性は十分にあり得る。これまでロシアがまさに今回のような事態を想定して威力を抑えた非戦略核の開発を進めてきたことや、核攻撃を受けていなくても核兵器を先制使用する核ドクトリンを練り上げてきたことを考え合わせると、その場合にプーチンが最悪の選択を下す可能性は十分想定しておかなければならないというのが、現時点での多くのインテリジェンス・コミュニティや軍関係の専門家の意見だというのだ。  ロシアのウクライナ侵攻を許したのはアメリカのインテリジェンス戦略の失敗の結果だったと指摘する春名氏と、ロシアの核戦略の現状と核先制使用の可能性などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今週の論点 ・現実味を帯びていく、ロシアの核兵器使用 ・アメリカがロシアを追い詰めた果てのウクライナ侵攻 ・政治家から失われた「懐の深さ」 ・ここでも見えてくる民主主義の凋落 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ■現実味を帯びていく、ロシアの核兵器使用 神保: なぜか日本もウクライナ情勢に一喜一憂している状況で、経済安全保障の法案がサラッと通っていたり、IPCCの新しい報告書が出たりと他にも重要な問題がありますが、ほとんど報じられず、注目もされていません。 宮台: ウクライナのニュース自体は報じてくれて構いませんが、中身がダメで、ほとんど役に立たない。プロレスの試合を見ているように、善玉と悪玉の戦いで、ハラハラしながら悪玉が早くやっつけられないか、という気分で見ているだけでしょう。 神保: ただ、そのシナリオで人々が動員されてしまっていて、やはり引き込まれてしまいますね。 宮台: そうですね。もちろんそこにはゼレンスキーというか、ウクライナの非常に巧妙な情報戦もあります。

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