━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高野孟のTHE JOURNAL Vol.545 2022.4.18
※毎週月曜日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《目次》
【1】《INSIDER No.1150》
現象に振り回されずに実体・構造を析出しよう/ウクラ
イナ情勢を理解するための〈頭の体操・その6〉
【2】《INSIDER No.1151》
「人生三毛作目」という恵み・続々
【3】《FLASH No.449》
仏文明批評家エマニュエル・トッドの論文「核武装のす
すめ」の真意/日刊ゲンダイ4月13日付「永田町の裏を
読む」から転載
■■ INSIDER No.1150 2022/04/18 ■■■■■■■■■
現象に振り回されずに実体・構造を析出しよう/ウクラ
イナ情勢を理解するための〈頭の体操・その6〉
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
普通、物事の認識は「現象から本質へ」と進むとされ
るが、そこには落とし穴があって、主張したい本質を最
初から設定しておいてそれに都合のいい現象だけを掻き
集めて立証した風を装うということがしばしば起こりう
る。今で言えば、プーチンが悪魔であるという“本
質”を際立たせるためにウクライナ市民がむごたらしく
殺された映像をこれでもかと並べるといったことであ
る。
これに引っかからないためには、現象論からいきなり
本質論に舞い上がってしまうことを避け、その間に実体
論の領域をできるだけ広く設営することである。実体論
とは、例えば諸現象の束がどれほどの量をなしていて、
それと相反する別の諸現象の束があるとすればその両者
が生み出すベクトルはどちらを向いているのか、といっ
たことである。現象をバラバラで感じるままに受け取る
のでなく、それらが織りなすその問題の実体・構造を炙
り出して、そこからゆっくりと本質論のレベルに向かう
のである。
●「アゾフ大隊」
前号で取り上げたエマニュエル・トッドの文春論文
で、彼がマリウポリが激戦地となる理由について「ネオ
ナチの極右勢力『アゾフ大隊』の発祥地だからだ」とサ
ラリと触れていることについては、先週の「日刊ゲンダ
イ」コラムで注意を喚起しておいた(本号FLASH欄参
照)。
マリウポリが「アゾフ大隊」の発祥地であるだけでな
く戦略拠点であって、そこを死守すべく恐らく外国人義
勇兵を含む数千人規模の同大隊の部隊が潜伏してロシア
の精鋭=特殊部隊と戦っていると考えられてきた。米欧
を含めたプロの観察者は、この戦争の1つの重要な要素
が「アゾフ大隊」の動向にあることを知っているので、
その実体論的視点からマリウポリを見ているが、マスコ
ミは相変わらず「ロシア軍が市民を殺した」一本槍であ
る。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)