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長有紀枝氏:未曾有の大量避難者を生んでいるウクライナ危機に日本の難民政策は対応できているか[マル激!メールマガジン]

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マル激!メールマガジン 2022年4月20日号 (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/) ────────────────────────────────────── マル激トーク・オン・ディマンド (第1097回) 未曾有の大量避難者を生んでいるウクライナ危機に日本の難民政策は対応できているか ゲスト:長有紀枝氏(難民を助ける会会長・立教大学教授) ──────────────────────────────────────  日本は世界中でもっともウクライナに強いシンパシーを感じているというデータが最近発表された。  イギリスのブランドファイナンス社が、2022年版の「グローバル・ソフトパワー・インデックス」の中で、調査対象となった世界120か国で「ウクライナ紛争は誰に責任があると思うか?」を質問したところ、「ロシアが悪い」と答えた人の割合が世界でもっとも高かったのが日本だった。その割合は81%だった。これにイギリスの74%、ドイツの67%、フランスの64%、ブラジルの63%が続いた。メディア報道の影響があるのだろう。 元々ウクライナという国は多くの日本人にとってそれほど馴染みの深い国ではなかったと思われるが、こと今回の戦争に関しては、日本がウクライナとの連帯感を強く抱いていることが、今回の調査によって数字として明らかになった形だ。  しかし、紛争当事国に対して日本が行える支援は限られている。基本的に武器の供与はできないし、派兵ももちろん無理だ。そこで日本ができる最大の支援が人道的支援だ。中でも今回のウクライナ戦争で発生している未曾有の避難民の受け入れは、日本が行うことができる最大の人道的支援となり得る。逆に言えば、それ以外はあまり日本にできることはない。  ロシアによる武力侵攻によって既に500万人ものウクライナ人が国外への避難を余儀なくされているが、今のところその大半は、250万人を受け入れているポーランドを筆頭に、ルーマニア、ハンガリーなどの周辺国に避難している。(それに加えてさらに500万人あまりが国内で避難を強いられている。) しかし、難民問題に詳しいNGO難民を助ける会の会長で立教大学教授の長有紀枝氏によると、周辺の受け入れ国では一般家庭が自主的に避難者を受け入れている場合が多く、紛争が長期化した場合、受け入れ家庭の負担が大きな問題になってくることが懸念されるという。  さて、問題は日本だ。4月5日、ポーランドを訪問していた林芳正外相が、ウクライナからの避難者20人とともに帰国したことが大きく報道された。この20人を含め、日本政府は今回、ウクライナからの避難者を400人あまり受け入れている。しかし、それはあくまで特例措置としての一時受け入れであり、難民条約や入管法に基づく正規の難民ではない。 知る人ぞ知るところだが、日本は国際的には「難民鎖国」で知られており、1951年の難民条約の締約国として難民の受け入れが条約上義務づけられているものの、難民を極端に狭く定義することで、ほとんどの難民を拒絶してきた。難民申請をした人に対して難民として受け入れられる人の割合を示す「難民庇護申請認定率」というものがあるが、2020年の日本の認定率は0.7%だった。これはカナダの75%、ドイツの52%、イギリスの22%、フランスの13%と比較した時にあまりにも低い。  今週はNGOの立場から長年難民問題に取り組み、また近年はジェノサイドや戦争犯罪についても研究領域を拡げている長有紀枝氏と、ウクライナからの避難民受け入れで露呈した日本の難民政策の弱点や問題点は何だったのか、なぜ日本は難民を受け入れようとしてないのか、世界はロシアの戦争犯罪をジェノサイドとして裁くことができるのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今週の論点 ・近隣国で広がるウクライナ難民受け入れとその背景 ・日本が難民を受け入れない理由 ・ロシアの戦争犯罪はどのようにして裁けるのか ・不十分すぎる国際的な立て付け 第三次大戦は起こってしまうのか +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ■近隣国で広がるウクライナ難民受け入れとその背景 神保: 今回はウクライナに関連した人道問題をきちんと取り上げたいと思います。端的に言えば難民/避難民問題と、もう一つは人道に対する罪、戦争犯罪あるいはジェノサイドと言われているものがテーマになりますが、これは一筋縄ではいかない。ただ、日本としては自分の問題として考えなければいけないことが、実はたくさんあります。 宮台: そうですね。導入的な話ですが、先日、恵比寿駅でロシア語のサインボードが撤去されたということがありました。しかしそこで、僕も含めて多くの人が馬鹿げていると批判すると、炎上する。僕らが言っているのは、もし皆さんにロシア人の友人がいたら、サインボードの撤去に合意できるのか。ロジカルな判断の問題ではなく、友人にとって不利益になるような政策に合意できないのは当然でしょう。つまり、それが実はわれわれのゲノミックな傾向なんです。 神保: それにロシア語はウクライナ人も使っているんですよ。そして恵比寿駅は、ロシア大使館に行く人がたくさん使う。 宮台: これはまさに言葉の自動機械的な、神経症的な言葉への固執であって「世界中がロシアに対して圧力を強めようとしているときに、なんで利敵行為をするんだ」と。僕のいうクズが湧いています。

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