I have a dream.

ドクター畑地の診察室137.2022.4.24. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います！おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者（肺癌、喘息、COPD、肺炎など）を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説＆ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信！ https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身　自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け！radioを聴いてらんらんらん（lung lung lung）」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ I have a dream. 有名なキング牧師の言葉です。本年4月、私の夢の1つが叶いました。 最近、“がんゲノム医療”という言葉を聞く機会も多かろうと思います。癌患者さんの原因遺伝子を多数調べ、その癌患者さんに適した治療を届ける医療です。特に肺癌の場合、多くの遺伝子検査を初回に施行し、それぞれに適した薬剤を届けることが大切になってきています。最も多い“EGFR遺伝子変異”“ALK遺伝子変異”などは調べられるのですが、現在治験中の有効な薬剤がある（世界中のどこかで）マイナーな遺伝子変異を調べようと思うと、現在の診療では初回治療がうまく行かなくなった時、がんゲノム医療拠点病院または関連病院でFoundation Oneというパネル検査を受け、※エキスパートパネルで議論をした後に結果を患者さんに伝えることになっています。 ※エキスパートパネル ・・・ がん遺伝子パネル検査で得られた結果が臨床上どのような意味を持つのかを医学的に解釈するための会議 三重県では、このがんゲノム医療拠点病院が三重大学附属病院にしかない上、Foundation One の検査は海外で行われるため、エキスパートパネルの議論を経た後、患者さんの手元に結果が届くには50日ほどかかります。しかも50万以上費用がかかるので、おいそれとオーダーができません。初回治療がうまく行かなかったあと、無治療で50日ほど待てる患者さんがどれだけいるのかということも問題です。 この検査を行うにはNGSという機械が必要になります。この機械を稼働させ、初回治療前の肺癌患者さんに結果を届けることができればどれほど素晴らしいことか、常々思っていました。 10年以上前から、このような検査を松阪市民病院で行うことが私の夢の１つでした。そのため当時、その検査を病院内でやっていた静岡がんセンターに見学に行ったりもしました。この機械を松阪市民病院に置いてくれるよう運動したのですが、なかなか日の目を見ずに現在に至ります。 ところがついに、昨年この機械を購入することができ、この4月から稼働させることができるようになりました。“OCV3”というパネルと“OPA”というパネルで検査できるようになりましたが、このパネル検査は国立がんセンター東病院がLC-SCLUMという組織の中で行なっている検査と全く同じものとなります。