■モノと生活をシンプルにつなぐ
「ミニマリスト」が目指すのは、モノを減らすことではない。だが、
「ミニマリスト=モノが少ない」という分かりやすい結果だけが独り
歩きしてしまっている。
だから、必要や便利を切り詰めてまでモノを減らすことを優先する
人もいる。本来は、自分の一番大事なことを見極め、市例外は潔く手
放し、あれもこれも欲張らないことだ。
ここでは「シンプリスト」「シンプルライフ」を提唱したい。物理現
象も、人の心理も、世の中は複雑だ。一方、シンプルとは、混沌とし
て複雑な要素を解きほぐし、本質を見極め、整理された状態が前提だ。
つまり「シンプリスト」とは、自分にとってのモノゴトの優先順位を
整理し、自分に正直でいることを重視し、取捨選択により必要最小限
のものだけで生活し、行動する人のことだ。
見栄のために身の丈以上に背伸びしたり、人からの評価は気にしない。
自分の価値観で判断することができる。自分のことをよく分かってい
て、自分らしくない選択肢は、上手に手放すことができるのだ。
モノであれ、仕事や人間関係などのコトでも同じだ。余分なものを捨
てるのは、自分が一番大事にしていることにフォーカスするためだ。
手放すのはあくまでも手段であり、モノの数は関係ないのだ。
★
ミニマリズムを追い求めていると、モノを減らすことを第一に考え、
常に捨てるモノを探してしまいがちだ。だが、それで本当に豊かとい
えるかどうかは怪しい。人は感動するために生まれてきたはずだ。
このことに気づけば「減らす」から「心の豊かさ、心地よさ」に軸足
をシフトすべきことに気づけるはずだ。もちろん、減らすことは、心
地よく過ごすために必要な行為であり、大前提だ。
かといって「減らす」ことが目的になり、チャレンジしたり、新しい
自分に変化したりすることの妨げになっては本末転倒だ。本当に大切
なモノなら、増やすことを恐れるべきではない。
★
身軽に軽やかに生きるべきだ。住みたい街や部屋があるなら引越せば
いい。仕事も遊びも、やってみたいことがあるなら、ためらいなくや
ってみる。楽しくなければ、すぐにやめればいい。
人生80年という。だが、残された時間など一瞬のはずだ。人生最期
の日に、出会った人に感謝し、やりたいことをやり遂げた、思い残す
ことがないと思いたいものだ。
人生を楽しむには、荷物は少ない方がいいはずだ。それは物理的なモ
ノに限らない。世間の常識や固定観念や不安、他人へのプライドとい
った「心の荷物」も同じだ。
便利なモノも、必要以上に持てば苦しくなる。情報も持ち過ぎるとノ
イズになる。必要以上に考えれば決断できず、行動もできなくなる。
必要以上に「持つ」ことは「お荷物」になってしまうこともあるのだ。
★
「モノより体験」と言われるが「モノこそ体験」と考えることもでき
る。家具にせよ、台所道具にせよ「よいモノ」を使えば、時間の質は
何倍にもなるからだ。
たとえば、照明が作る空間、やわらかく心地よい光のもとで過ごす夜
の時間は、やさしい気持ちになるはずだ。よいモノを使うということ
は、よい体験につながっているのだ。
ここで言う「良いモノ」は、人によって違う。有名人が良いと言って
も、自分に合うかどうかは限らない。人の価値観に振り回されず、自
分の感性を信じるべきだ。何がよいか知っているのは自分だけなのだ。
暮らしの道具や家具を選ぶ際は、それを使うシーンに体験の質がどう
変わるのかについて、思いを巡らせてみるべきだ。生活そのものが芸
術として味わい深く、尊いものに思えてくるはずだ。
モノの所有にシビアになり過ぎるべきでない。所有の理由を明確にす
ることは、モノを減らす上で必要だ。しかし、ストイック過ぎると息
が詰まる。理屈で語れない美意識にも目を向けるべきなのだ。
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