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【Vol.427】冷泉彰彦のプリンストン通信『岸田政権のロシア外交』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「岸田政権のロシア外交をどう考えるか?」  鈴木俊一財務大臣は4月20日に行われた、G20の財務大臣・中央銀行 総裁会議の終了後に記者会見しました。そこで、会議の中でロシアの代表団 による発言の際、「自分自身は退席しないで」、ロシアのウクライナ侵攻を 「最も強い言葉で非難した」と明らかにしたのだそうです。  ちなみに、米英など西側諸国の一部は、ロシア側が発言をする場面では会 議から退席することで抗議の姿勢を示していたわけで、鈴木大臣は表面的に は「ロシアとの喧嘩をスルー」した格好になりました。   また、日本維新の会の鈴木宗男参院議員はこれと前後して4月17日に、 札幌市で講演し、ロシアが北方領土問題を含む平和条約締結交渉の中断など を表明したことについて、「現状では」という断りが付いていると指摘し、 「まだ(日本に)配慮してくれている面がある」との認識を示したそうです。  その上で「(ロシア側のメッセージを)裏表を見ずに斜め読みしていると、 どこかでツケが回ってくる」という不思議なコメントを述べています。これ に対しては、宗男議員=親ロシアという「常識的な」」見方から、同議員は 「制裁を見直せ」と言っているのだという解説がされています。  ちなみに、その鈴木宗男議員の発言ですが、ロシアが「平和条約交渉を中 断」と言っている中に「現状では」という「但し書き」があることに注目し て、「これは完全に日本との関係を切るのではない」というメッセージが入 っているという解釈をしているわけです。  つまり「だから制裁をやめろ」というのではなく、「制裁をして、ロシア を怒らせたのだから北方領土を諦める」というのは短絡であり、ロシアに負 けないように、もっと息の長い交渉をすべきだとしているわけです。また、 今はその時期ではないということも、宗男氏にしても理解しているのだと思 います。  一方の鈴木俊一大臣ですが、実は鈴木善幸総理の息子さんです。善幸氏と いえば、1977年に「200カイリ」問題で大トラブルとなった、ロシア (当時はソ連)との漁業交渉を非常に粘り強く担当したことで有名です。そ の粘りが、最終的に善幸氏を総理にまで押し上げたと言ってもいいでしょう。  あまりに、ソ連との交渉で粘りを見せていたので、アメリカは、善幸氏を それこそ宗男氏のように「ソ連寄りのフィクサー」と誤解していたという説 もあるくらいです。  さて、最初の鈴木大臣の言動ですが、実は、前後した宗男氏の発言と「連 動はしていないかもしれないが、動機は同じ」だということが指摘できます。  というのは、この4月の17日から20日というタイミングでは、オンラ インで、日本の水産庁とロシアの「サケマス漁の交渉」が続いていたからで す。そして、意外なことに、この交渉は「成立」したのでした。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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