■「超」戦略的に聴く技術
コミュニケーション力、すなわち「コミュ力」の高い人というと、普
通は「話す」ことが上手な人を想像するはずだ。面白い話を流ちょう
に話し、人を説得でき、自分をアピールするのに長けた人のことだ。
だが、コミュニケーションは、話す側と聴く側の双方向で成立してい
る。そして、コミュ力を高めたいなら、むしろ「聴く技術」を磨くほ
うが、より近道で、パワフルだ。
なぜなら、人は「自分の話を聴いてもらいたい」と切に願う生き物だ
からだ。誰もが「自分の話を聴いて欲しい」と思って、うずうずして
いるのだ。
特に、最近はSNSなどもある。そのため、誰もがいつも「話を聴い
てもらいたい」状態になっている。その結果「話したい人」ばかりで
「聴いてあげる人」が不足している状態だ。
いわば、需要(話したい人)と供給(聴いてあげる人)がアンバラン
スな世の中なのだ。そう考えると、時代は聴き上手を求めている。だ
から「聴く技術」を磨く意味、価値が高まっているわけだ。
★
ある実験では、人は自分のことを話し、それを周りから評価されたり、
賞賛されたりすると、脳内で快楽ホルモンと呼ばれるドーパミンが分
泌されることがわかった。脳が超キモチいい状態になるのだ。
つまり、聴き上手になれば、相手に快感を与えることができる。する
と、相手に好かれる。やがて、相手にとって必要不可欠な存在になれ
るのだ。
これができれば、人生がうまくいくために必要な「自分のファン」と
いう強力な武器が手に入る。そして、聴く力は先天的な能力ではない。
後天的に、誰もが100%、確実に高めることができるものだ。
みんなが「話したい」と思っている時代だからこそ“聴くコミュ力”
を高めるべきなのだ。そうすれば、人間関も、仕事、恋愛など、あら
ゆることがうまくいくようになるはずだ。
★
「聞く」と「聴く」では違う。「聞く」は、相手の言うことを情報と
して受け取るだけ、音が耳に入ってくることだ。「聴く」は、相手の
言うことをメッセージとして受け取る、意識して耳を傾けることだ。
「聞く」は、意識して耳を傾けていない。だから「あなたの話に興味
がない」ということが、相手に伝わってしまう。相手は「自分を軽ん
じている」「話さなければよかった」と思うはずだ。
そうならないように聴いていることが相手に伝わるように、意識して
耳を傾ける。そのためには、表情や目線、あいづち、ジャスチャーな
どにも気を配る。言わば全身で聴く。それが「聴く」ということだ。
そんな聴き方をされれば、相手は好意や信頼を持つはずだ。つまり
「聴く」とは「伝える」ことでもあるのだ。ここに気づき、人の話を
聴けば、仕事、人間関係、そして人生に大きく影響してくるはずだ。
★
人間が、自分の話を聴いてもらいたいと切に願うのは「承認欲求」が
あるからだ。マズローの「欲求五段階説」の一つで「尊重されたい」
「認められたい」という根源的な欲求だ。
「ちょっと話を聴いてくれる」は、相手の「承認欲求」がふくれ上が
っている可能性が高いサインだ。だから、面倒くさいと思わずに、
チャンス到来と思うべきだ。
特に、相手が自分にとって重要な人物であるほど「聴く」ための態勢
を整えるべきだ。そして「全力モード」で話を聴き「あなたに話して
よかった」と思ってもらえるようにするべきだ。
自分にとって、そこまで重要でない相手なら「適度モード」で対応す
ればいい。適度にあいづちを打ち、適度に持ち上げれば、適度な関係
が維持される。少なくとも、嫌な印象を与えることはないはずだ。
いずれにしろ、人の話を、受け身で「聞く」のではダメだ。常に、目
的を持って、狙いを定めて、能動的に聴くことだ。これこそが「戦略
的に聴く」ことの真意なのだ。
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