プーチンのロシアとの別れ　（その3）

■■ 2022/05/02 ■■ 兵頭正俊の優しさ出前 ～３分でマスメディアとは違ったステージに招待します ～ ■■■■■■■■■■■■■■ 内容のレベル:中高級者向け発行人 ：兵頭正俊登録解除 はここから http://bit.ly/AvYMkY　 ━━━━━━━━━━ 　プーチンのロシアとの別れ　（その3） ━━━━━━━━━━ アンドレイ・コレスニコフは書いていた。 「潜水艦」からはどこへも逃げられない。現在のロシア を例えるにはうまい例えだ。とくにエリートたちには決 定的な比喩だ。「ロシア語には、この状況を表す諺があ る。「潜水艦を出てどこにいくのか」。どこにも逃げ出 せない。死にたくなかったら潜水艦のなかでじっとして いることだ。 日本在住のロシアのユーチューバーがユーチューブで不 安を語っている。かれらはまだ日本という「自由」な社 会にいて幸運だった。プーチンの悪口もまだいえる。批 判もまだいえる。しかし、その論調はすでに慎ましやか なものだ。せいぜい「戦争反対」だ。 こんな大きなテーマを口にすることをなぜ恐れるのか。 それがプーチン批判に繋がっているからだ。 東京のデモでも「戦争反対」でプーチン批判を言外に表 現することが精一杯の様子だ。「戦争反対」。日本なら もっとうまい文句を考えろよ、といわれるところだ。し かし、遠く離れた東京でさえこれがギリギリの表現らし い。 置かれた状況のなかでこの闘いの姿勢にはデモ参加者に 敬意を表したい。 「渡航や欧米への銀行取引が閉ざされた今」というが、 こうなると海外へ脱出もままならない。日本在住のロシ ア人はまだ幸運だった。 さらにプーチンは１万ドルを超える外貨を国外に持ち出 すことを禁止した。 プーチンへの協力か、刑務所に入るかの選択肢しかな い。ロシアという潜水艦は具体的であり、もう比喩以上 の存在だ。 何度も取り上げられるプーチンとの距離。それも座る位 置関係の距離だ。「プーチンは政治局メンバーを、あた かも、自身の孤立を映し出すかのように、巨大な部屋の 反対側、自分からはかなり離れたところに座らせた。彼 らは座って話を聞き、プーチンの立場を自動的に承認し た」。 政治家たちのみが縛られているのではない。ロシア財界 のリーダーたち、富裕層もそうであり、プーチンから離 れると、莫大な富みに支えられたその地位も一挙に瓦解 する。プーチンとのつながりを解けば、「破産するか刑 務所か」という選択しかない。その結果、「政治局メン バー、オリガルヒ、政治エリート層をより強固なプーチ ン支持へ向かわせている」。 アンドレイ・コレスニコフによるとプーチンはロシアの 民衆を自分と同じ境遇に置きたがっている。 1　欧米世界から切り離し、ロシア国民をプーチン支配 の人質にする。 2　プーチンが孤立しているように、ロシア人を世界か ら孤立させる。そして自分の潜水艦から脱出できないよ うにする。 3　その結果、親欧米のロシア人も、自分たちが今やロ シアというならず者国家の一部であると感じている。