メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

松尾スズキの【のっぴきならない日常】vol.515(2/2)

松尾スズキの、のっぴきならない日常
_________________________ / 2022年5月20日発行 /Vol.515(2/2) _________________________ 「人生に座右の銘はいらない」 読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします! Q.コロナや円安の影響で、さまざまなものが値上がりしています。原料など原因がわかりやすいものもありますが、そうでないもの(便乗?)もあるような、ないような。ところでチケットの値段がどう決まっているのか存じ上げないのですが、やっぱり、この先、いつかは劇場チケットも値上がりするのでしょうか? もうヤング割引も使えない年だし、給料も上がりそうにないので、値上がりは正直、辛いのですが、まあ、しょうがないですよね……。(27歳、女性、派遣社員) A.舞台の材料費などが値上がったという噂は聞きませんが、なにしろコロナ禍になって、コロナ対策という新しい出費が出現し、公演予算を圧迫、いきおいチケットの値段が上がっているのは事実です。PCR検査の数が尋常でありません。演劇人は、綿棒を見るとつばが出る、というパブロフの犬状態になりつつあります。稽古場や劇場の消毒費用も、ばかになりません。大人計画は、同世代くらいの劇団に比べれば、比較的安めの値段設定でがんばっていますが、たしかに演劇のチケットは高い。 まあしかし、最近では「配信」なんていうこともやっているので、とくに地方の方には、安く、映像ではありますが生で芝居を観られるということで喜ばれております。配信なら3千円ほどで見られますから(今回、それをやるかどうか、わたしはまだ存じ上げません)。しかし、配信というのもスマホで撮っているわけでなく、プロの撮影スタッフを雇って映像に乱れのないよう気を遣ってやっておりますゆえ、それはそれでお金がかかるのは事実です。何に対しても忸怩たる思いがあります。ほんとはすべてを投げ出して、寝て暮らしたいです。でも、そういうわけにもいきません。芝居をやる、という行為は、わたしの生き方の半分くらいをしめているやつなので……。 Q.山口県の自治体がコロナの特別給付金10万円を間違えて1人の男性に全住民分振り込んだ件、おもしろすぎませんか? みんな悪者というか、振り込まれた若者も、間違えた行政も、アホな登場人物ばっかりで笑えます。この件について、ネット番組で、ひろゆきさんなんかが、逃げている若者や自治体はYouTubeをやって経緯を公開すれば、(損害金や賠償金を)ペイできるんじゃないか、って話していて意外な解決法(?)にビックリしました。松尾さんはYouTubeを、よくご覧になっているようですが、「うまいなあ」とか「そうきたか!」と思った動画はなにかありましたか?(30歳、男性、会社員) A.YouTubeでお金を得る方法は、いまだよくわからず、手を出しあぐねるジャンルであります。勉強になるやつは見ますね。「10分でわかるソ連崩壊」みたいな「解説もの」はよく見ています。あと間取り好きなので、変わった不動産を紹介する動画とか。料理動画、運動系の動画もよく見ます。あ、TikTokで、肉食獣が草食獣を追いかけ回している映像も、なぜかたまに見ます。でも、ある程度以上見ていると、おのおのパターン化されているのが透けて見えてきて、あるとき急に飽きて見なくなるんですね。大食いの人とか、ずっと続けていて変化をつけるのはなかなか厳しいと思います。 そういうとき、視聴者の側に「飽きた、見ない」という方面への身軽さもあるので、YouTuberという生き方は大変だなあ、と思います。演劇で言えば、1万円近くのお金を払っておいて「観ない」という選択はありえないですからね。そういうメディアとしての重さはあると思うのです。タダで手に入るものは手放しやすい。ひろゆきさんみたいに時事を扱っている人は、毎日アプローチを変えられるので強いと思いますけど。 Q.缶コーヒーが好きなのですが、最近よく見かけるようになったペットボトルのコーヒーが苦手です。冷たいのも暖かいのも、中途半端な気がして……。もちろん慣れの問題だとは思うのですが、松尾さん的に「これは慣れないな」というものはありますか? 食べ物や飲み物でなくとも、生活上のあれこれでも、こだわりが強そうな松尾さんなら、意外なものが聞けそうな気がしています。(44歳、男性) A.こだわり強そうに見えますかね。まあ、コーヒーに関してはブラック無糖をつらぬいています。昔、回転寿司でバイトしていたときに元ヤンの先輩が、女を拉致して山でどうにかしたとかいう話を武勇伝みたいに話しているのを聞いてドン引きし、そいつが激甘の缶コーヒーを日に何本も飲んでいたので、その頃から、砂糖入りのコーヒーを飲むのが嫌になったというのがあります。マンションの一階に自動販売機があって、そこでよくダイドーの無糖の缶コーヒーを買っています。たしかにペットボトルのコーヒーは、量が多すぎて、最後、ぬるくなってとてもまずくなるので手が出ません。こだわりというか、ラーメンには必ず胡椒をかけます。ラーメンの出汁の香りと、立ち上ってくる胡椒の香りが渾然となった湯気を嗅ぐのが至福なのです。だから、カウンターに胡椒を置いていないラーメン屋には軽くむかつきます。胡椒も込みでラーメン、という人間もいることを忘れてほしくないのです。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 松尾スズキの、のっぴきならない日常
  • 有名役者がひしめく「大人計画」を主宰し、芥川賞候補の作家、岸田國士戯曲賞受賞の演出家、現代日本を代表する怪優など、才能が溢れすぎて困っているのに、謙虚な佇まいが魅力的すぎる松尾スズキ。そんな彼のメルマガは、日記、質問&人生相談(もちろん本人が答えます)など読み応えタップリ! これだけのボリュームで月々たったの500円!!
  • 550円 / 月(税込)
  • 毎月 第1金曜日・第2金曜日・第3金曜日・第4金曜日(年末年始を除く)