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【死んでも書きたい話】 「助けてください」の写真を撮られる

安田純平の死んでも書きたい話
ロシアのウクライナ侵攻について、ウクライナへ米国などが武器支援していることをもって「米国の代理戦争」と表現する人がいますが、他国に軍事侵攻されている国が自国が持つ兵器だけで対応できるわけがなく、よほどの軍事大国でない限り他国からの武器支援を求めるのは当然の展開です。欧米からの武器支援がなければウクライナは全土がロシアの支配下にされるだけです。 ロシアの侵攻がなければウクライナ側がロシア軍を攻撃することも米国などが兵器を送ることもないのであって、「代理戦争」と言って武器支援をする側を批判するのはお門違いとというものです。「代理戦争」という批判をするために「ウクライナを欧米が無理やり戦わせている」という説まで出ていますが、無理やり戦わせることなどできません。 「停戦」を働きかけるべきだという意見もありますが、ウクライナの領内に侵攻して攻撃しているのはロシアであって、ロシアがそれをやめない限り、ウクライナが抵抗するのは当然のことです。ロシア軍が撤退すればすむ話であって、説得すべき相手はロシアです。 「停戦」するために領土の割譲をウクライナに受け入れさせるべきだ、という声までありますが、それは単に軍事侵攻したロシアに戦果与えようというだけのことで、自ら命をかけているわけでも自分の土地を受け渡そうとしているわけでもない、何のリスクも負っていない他人の戯言です。「これ以上の犠牲を出さないため」などと言っていますが、「戦争を始めたもの勝ち」の話でしかありません。 2014年以降のウクライナ東部の紛争をもって「ロシアは戦争せざるを得ない状況だった」と言う人々もいて、かつての日本の戦争を賛美する靖國神社遊就館のナレーションかと耳を疑いましたが、それが日頃は「戦争反対」と言っている人々から出ていて、右も左も行き過ぎると言うことは同じだなという印象です。 「戦争をせざるを得ない状況だった」と言ってロシアのウクライナ侵攻を容認できるなら、日本も「やむを得ない状況」なら「敵基地攻撃能力」によって他国へ先制攻撃をしてもよいということになるのではないでしょうか。その是非は本当に「やむを得ない」かどうかの状況次第でしかなく、そんなものは戦争を始める側が勝手な解釈で行われるのだから何の抑止効果もありません。 ロシアの侵攻を「やむを得ない状況だった」と言っている人々を見ると、日本の「敵基地攻撃能力」所有には批判的で、これでは「ロシアは戦争してもいいが日米はだめ」と言っているようにしか見えません。 2014~2021年のウクライナ東部の状況ですが、国連の調査では死者は約14000人で、そのうちの一般市民は少なくとも3404人ですが、ほかはウクライナ軍と親ロシア勢力です。一般市民の死者の大半である2084人は2014年で、これは親ロシア勢力がロシア軍から提供された対空ミサイルで撃ち落としたマレーシア機の乗客乗員の298人が含まれています。2021年の死者は双方合わせて25人で、双方による深刻な人権侵害の事例が報告されていたのは確かですが、「ロシアがウクライナ侵攻をせざるを得ない状況」とはとても考えられません。 この間にも親ロシア勢力の支配地域には日本を含めたジャーナリストが取材していますが、ロシア側からの取材であるにもかかわらず、ロシアが主張するような「ウクライナ軍が14000人の市民を虐殺した」という証拠といえるようなものは示されていません。 今回の戦争への反応は、日本の「反戦平和」や「護憲」の大きな帰路になる気がしています。 私自身はどの国であろうと他国への軍事侵攻は許されないと考えています。しかし、例えばルワンダの虐殺のように双方を引き離すということをしなければ被害が拡大する場面というものはあり、軍隊による「人道的介入」はあり得ると思っています。これが公正に機能するためには集団安全保障体制としての国連が機能する必要があります。そのためにも、国際法違反行為に対しては厳しく対処する必要があると考えます。 日本については、情報収集能力も分析能力もなく、事実よりも情緒と根性論に走る傾向があり、「やむを得ない状況」など判断できるわけがないので、「絶対に日本の領域から自衛隊を出してはいけない」というのが私の立場です。一度決まった公共事業が止まらないように、戦争を始めたら止めることもできないでしょう。困難であっても諦めない日本的根性論はものづくりにはいいですが戦争には最悪です。日本ほど戦争をやると最悪なことになる国はないと思っていますので、何があっても戦争ができない縛りのある憲法を持つべきだと考えています。 その意味では改憲もよいと思っていますが、現状ではろくな改憲にならないことが目に見えているのでやめた方がいい、というのが現在の私の立場です。

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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