この『ブルー・ベルベット』の名場面も音に注目してみると本当に素晴ら
しい。ここでは空調と照明器具の立てるノイズが、あたかもノイズ音楽の
ように緊迫した雰囲気をもたらしており(しかもそれと別に濃厚なアンビ
エントの「空気音」も足されています)、そこに急に「黄色い服の男」の
ポケットの警察ラジオのノイズまじりの音声が、文字通り裂け目をこじ開
けるようにして飛び込んできます。先程の『エイリアン』などの例と同じ
く、ここで観客が耳にする音もほとんど全てが後から加えられた音響効果
です(黄色い服の男の腕が反射的に動いてランプに当たる音ーーの一部く
らいは現場の音だと思いますが)。戦争映画やSF映画の音響効果はよく
目立つので意識に上りやすいのですが、リンチの作品はどれもこのような、
一見静かな場面であっても音響効果がものすごく豊かで、いつ観てもうっ
とりさせられてしまいます。
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