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第170号 歌うカエル農場/シーラカンスの憂鬱/さくらんぼ/玉手箱の中身は?

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  • 2022/06/08
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「歌うカエル農場」 子どもの頃に食べられなかった食べ物、苦手だった食べ物が、大人になる頃には食べられるようになった‥‥というのは、良くある話です。どんなに嫌いな食べ物でも、親から厳しく躾けられているうちに、たいていの場合は何とか食べられるようになります。言わば「慣れ」です。でも、これとは違って、子どもの頃は大嫌いだったのに、大人になったら逆に大好物なった‥‥というパターンもあります。あたしの場合は、ピーマンやミョウガなのですが、これは「慣れ」ではなく「味覚の変化」です。 子どもの味覚は全般的に大人より敏感で、特に酸味と苦味と辛味は大人より強く感じると言われています。そのため、大人は美味しいと感じる食べ物でも、子どもにとっては、酸っぱすぎたり苦すぎたり辛すぎたりするものも多いのです。ですから、小さな子どもにピーマンなどを無理に食べさせようとするのは、あまり良いことではないという指摘もあります。 しかし、こうした人間側の「味覚の変化」とは違って、明らかに食材の味のほうが子どもの頃とは変わったと感じるものもあります。あたしの場合は、ニンジンとホウレンソウです。あたしが子どもの頃に食べていたニンジンは、今のニンジンよりも味が濃く、甘みもあり、独特のニンジン臭さがありました。ホウレンソウも、もっと味が濃く、ちゃんとホウレンソウの味がしました。 でも、今のニンジンやホウレンソウは、ニンジン臭さやホウレンソウの味がほとんど感じられなくなりました。他の野菜も、たとえばキャベツとかダイコンなども、子どもの頃に食べていたものより味が薄くなったように感じます。あたしは、これらは「味覚の変化」ではなく、品種改良によるものだと思っていました。 何故なら、たとえばニンジンの場合、あたしが子どもの頃に食べていたものは、今のニンジンよりもオレンジ色が濃く、先に行くほど細くなる形でしたが、今のニンジンは、先までほとんど同じ太さです。味も、昔のニンジンは、カレーに入れて煮込んでもちゃんとニンジンの味がしましたが、今のニンジンは味が薄いので、カレーに入れるとカレーの味に負けてしまいます。 ホウレンソウも、あたしが子どもの頃に食べていたものは、根本の部分が赤くて、母さんは「ここに栄養があって美味しいのよ」と教えてくれました。そのため、あたしは、ホウレンソウのお浸しでもお味噌汁でも、根本の赤い部分を大切に味わって食べていました。しかし、最近のホウレンソウは、根本の赤い部分がほとんどないか、まったくないのです。 でも、昔ながらの農業をしている知り合いから分けてもらう野菜は、ニンジンもホウレンソウも他のものも、それぞれの味がしっかりと感じられるのです。そのため、あたしは、スーパーなどに並んでいる大量生産の野菜は、品種改良されたものであり、その結果として味が薄くなってしまったのだと思っていました。 しかし、大量生産によって薄くなったのは、野菜の味だけではありませんでした。食品専門の学術誌『Foods』の2022年1月号に掲載された農作物の鉄分含有量の調査結果によると、オーストラリアで大量生産されている農作物のうち、トウモロコシ、ジャガイモ、カリフラワー、インゲンなどの鉄分が、過去30年で30~50%も低下していたことが判明したのです。 また、米テキサス大学のドナルド・デービス教授の研究チームが、米国農務省のデータをもとに40種以上の農作物の過去50年の栄養素の変化を調査したところ、ブロッコリー、ケール、カラシナ、アスパラガス、コラード、カブ、イチゴ、スイカなど多くの農作物で、タンパク質やカルシウム、鉄分やリン、ビタミンCやリボフラビンなどが、最大で38%も低下していたことが判明しました。

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