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松尾スズキの【のっぴきならない日常】vol.519(2/2)

松尾スズキの、のっぴきならない日常
_________________________ / 2022年6月17日発行 /Vol.519(2/2) _________________________ 「人生に座右の銘はいらない」 読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします! Q.最近、欲がありません。物欲も出世欲も、自己啓示欲も食欲も性欲も。年齢のせいだと思うのですが、このまま無気力に年老いていくかと思うと怖くもあります。松尾さんと、ほぼ同世代なのですが、松尾さんの「欲」の調子はどうですか?(57歳、男性、出版) A.たしかに、とくに俳優として知名度を継続したい、という欲が、コロナ禍において、だだ下がりしている気がして、そこに危機を感じています。まあ、それ以前に依頼が来ないというのが問題なのですが。わたしは、しくじったのかな、と、ふと考えるのです。こんなに長く俳優として仕事の依頼がないのは、どうもおかしい。なにか、めんどくさいやつ、というような風評が業界に出回っているのかしら。 たしかに、ある時期、脚本に注文(ここ、覚えにくいので言葉の順番変えていいですか? みたいなことですが)をつけたことも二度三度ありましたが、あれがいかんかったのかなあ……とか。去年は、テレビドラマ一本、映画二本、コント一本。まあまあ出たほうかなとも思いますが、今年は、もう半分ほど過ぎて、ゼロです。このまま年末まで行ってしまいそうです。干されてるのかな? と考えるのが怖いので、コロナ、そして、欲がなくなったという物語にすり替えようとしている自分も感じます。そろそろマネージャーと膝を突き合わせて話をしなければならないのかな、という気もしてきました。仏教的な観点でいうと、欲がなくなるのは楽になるということですが、同時に動物として寂しいことでもあります。まあ、町でまったく顔を差されなくなったというのも、また気楽なものではありますが。 Q.俳優さんたちのSNSを見ていると、印象と少し違うことをアップしていたりして、仕事的にマイナスじゃない? なんて思うこともあります。もちろん、いまどきの宣伝ツールとしては効果的だとは思いますが、昭和のころの、テレビにもあまり出ない俳優さんのほうが、こちらの想像力をかきたててくれて(勝手に)魅力的に感じさせてくれた気がします。松尾さんはツイッターをやめてずいぶん経ちますが、若手の俳優さんなど、役者さんの上手なSNSの使い方とか、あったりすると思いますか?(54歳、男性) A.宣伝、以外にないのではないでしょうか? わたしも宣伝のツールとしては、ぜひ手元においておきたかったのですが、今は叶わぬ夢です。自分の印象をコントロールしたいのであれば、メルマガでここまで赤裸々に心情を吐露するべきではないと思うのですが、おのれの中の私小説作家気質が心の内をあけすけに書かせてしまうのです。そうしたい、という欲が止まらないのです。あ、欲、ありましたね。わたしは、日記をさらしたい……。ただ、SNSみたいに双方向性のものは苦手のようです。誰かに返信をして、誰かに返信をしない、という返信相手の選別が、 おこがましくて……。でも、絵を描いているので、それをインスタグラムに載っけていこうかな(ツイッターは締め出されたので)、なんてことを少し考えています。絵を公開しているインスタグラムを覗くうち、そんな気になってきました。俳優たちのSNSを覗くことはないのですが、みな、たぶん単純に寂しいからやっているんだと思います。なんだかんだ華やかに見えますが、いついなくなっても代わりがいる世界。みな、どこか孤独だし、かまってほしいんだと思います。そんなもんです。

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  • 有名役者がひしめく「大人計画」を主宰し、芥川賞候補の作家、岸田國士戯曲賞受賞の演出家、現代日本を代表する怪優など、才能が溢れすぎて困っているのに、謙虚な佇まいが魅力的すぎる松尾スズキ。そんな彼のメルマガは、日記、質問&人生相談(もちろん本人が答えます)など読み応えタップリ! これだけのボリュームで月々たったの500円!!
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