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日銀のYCC政策破綻寸前で露見したアベノミクス路線継続ゼロ状況~岸田政権は路線変更が求められる

今市的視点 IMAICHI POV
  • 2022/06/18
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*******************************************************   今市的視点 IMAICHI POINT OF VIEW   金融、経済、政治、企業といった領域でのニュースや   トピックスをテーマに独自の視点で鋭く切り込みます   ツイートアカウント @imaichitaro   よろしかったらフォローもお願いします。      6月1日号 ********************************************************** 日銀のYCC政策破綻寸前で露見したアベノミクス路線継続ゼロ状況~ 岸田政権は路線変更が求められる 安倍元首相は桜を見る会の前夜祭でのサントリーただ酒 提供問題などのは一切口を開きませんが、自民党の若手 衆参議員でつくる責任ある積極財政を推進する議員連盟 び会合で日本銀行の黒田東彦総裁の後任について、次の 総裁もしっかりとしたマクロ経済分析ができる方にやって もらいたいとの妄言を吐いています。そもそもアベノ ミクスはマクロ経済分析に基づく高邁な政策だったのかと いうことを考えますとひねったクビが一生もとに戻らなく なりそうですが、日銀が安倍政権下で実施した中央銀行 としては異例の根幹政策であるイールドカーブコントロール がいよいよここにきて制御不能で破綻寸前となっており アベノミクスと呼ばれる強引な金融緩和政策もここからの 持続性はゼロ、最近の言葉でいえば全くサステイナブルな ものでなくなってきています。 新しい骨太の方針でアベノミクスを継承するかのような内容 に変化させた岸田首相はいきなりその政策が暗礁に乗り上げ かねない状況に直面しはじめています。 ■アベノミクスとは結局日銀の財政ファイナスと金融抑圧、人工値付け相場実施のこと もともと第二次安倍政権で策定された日本再興戦略と呼ば れたプランでしたが、国内のブロガーの誰かが80年代の レーガン政権時のレーガノミクスをなぞってアベノミクス と呼んだのを日経新聞だか朝日新聞だから積極的に使い はじめて定着したとか当時の中川秀直氏が命名したなど 諸説がありますが、世間で定着したことから安倍元首相も 自ら使い始めることとなり、中身の定義より名称のほうが 広く認知、普及されることとなりました。 当初このアベノミクスは第一の矢で大胆な金融緩和政策 を実施、第二の矢で大幅な財政出動を実施、さらに第三の 矢では民間投資を喚起する成長戦略の実現というステージ を策定していましたが、巨額の財政出動をしても景気は 決して上向かず、成長戦略も殆ど何も実を結ぶことはなく 結果的には日銀が履行する量的質的緩和政策だけに依存 する形となってしまいました。安倍政権では毎年大規模 な補正予算を持ち出しては財政出動で景気対策を声高に 主張してきましたがその成果は殆ど感じられず、直近で は新型コロナ対策の予備費が11兆円以上どこに消えたか わからないといった体たらくも示現する始末で8年間 ほとんど機能しなかったことが今更ながらに感じられる 状況です。 日銀は市中から莫大な日本国債の買入れを行いすでに 直近では525兆円という発行国債の5割を超える額を 保有保有することで中央銀行としては本来実現できない とされてきた長短金利の制御、イールドカーブコントロール を現実のものとし金利の上昇局面ではさらに買付を増やす ことで完全に市場を制圧することに成功したかに見え ました。買付に応じた本邦金融機関はその資金を市場に バラまくことはせず日銀の当座預金に預け入れることで 豚積み状態となりインフレにもならずにこの8年間を 過ごしてきたことになります、これは直接政府から買付を するのではないものの事実上の財政ファイナンスにあたるもの で、これこそが安倍元首相をして日銀を政府の子会社などと 呼ばしめる基本のなっているわけです。 日銀は大量発行の国債費が上昇しないように金融抑圧でゼロ 金利を継続することにも貢献してきています。さらに国内 株式ETFを大量に交友することで証券市場の人工値付け相場 の実施にも成功し、表面的には株価、経済成長率、企業業績、 雇用等、多くの経済指標が劇的改善をみせたような演出を することとなったわけです。しかし株価は確かに上昇しまし たが、経済成長ははかられず忖度官僚が経済指標を捏造する ことでまるで成長したかのような錯覚を国民に与えること になりましたし、株価上昇で内部留保というあぶく銭を得た 企業はその殆どを従業員の賃金上昇に分配することはなく、 給与は一段と低いレベルに留まることとなったのはご案内の 通りで、すでにこの実態が安倍辞任後あからさまになって きているのが足もとの状況です。 ■元々日銀緩和に出口戦略が全く想定されていないことが露見 日銀黒田総裁は自身の任期が切れて退任するまで安倍政権下 で確約したこの財政ファイナンスとゼロ金利の金融抑圧を 継続するつもりだったのでしょうが、ここへ来て米国をはじめ 主要国が軒並み利上げを行う中でただ一国だけ量的緩和を延々 と続けることができなくなりはじめており、海外の投機筋も YCCも足もとでは日銀主導による国家管理相場の限界を試す かのような動きにでており、92年のジョージソロスと英国 中銀との激しい戦いを思わせるような深刻な対立が市場で 繰り広げられつつあります。 日銀は酷く冷静さを装って無制限買い付けオペなどをやらか しても10年債が0.25%に制御できず、先物ではすでに0.5% 超まで金利が上がる始末でYCCはいよいよ破綻する可能性 が日々高まっています。黒田総裁は17日の政策決定会合 後の会見でもYCCの金利上限を変更するつもりはなく、今後 も粛々とYCCを実現すると涼しい顔で発言していますが、 直面する状況はかなり深刻です。 仮に発行済みの残りの470兆円分のJGBを全て買入れる覚悟 で市場に買付オペを叩きつけたとしても金利を制御できる 保証は何もなく、逆にその間に円が大幅に売られることになれ ば結局市場に敗北せざるを得ない事態が示現することも覚悟 せざるを得ない状況です。 今年の年初日銀が保有する国債は8兆円ほどの含み益があり ましたが、今月14日あたりでその含み益は完全にゼロとなり 現状では含み損が発生しはじめています。こうなると自ら金利 を上げれば含み損は猛烈に拡大することとなり、ブルームバーグ の試算では日銀が宗旨替えで利上げを余儀なくされた場合、 100bpつまり1%の利上げで29兆円の含み損を抱えるとの報道 もではじめています。 日銀が買入れている国債はいわゆる満期保有目的債券となって いますから文字通り満期まで保有していればどれだけ含み損が拡大 しても会計上は債務超過にはなりませんが、FRBのQTの実施の ようにひとたび満期保有目的を崩しその一部を売却するようなこと になれば評価損は自己資本から差し引くことになり実質債務超過が 露見することとなります。 まあ、政府が増資すればいいだけのことという楽観論を口に する政権贔屓のエコノミストもいますが、実質債務超過を 評価するのは国際社会ですから下手をすれば大きく信認を失う ことになりかねず、なんら安心することはできないのが現実です。 ■アベノミクス完全終了でどうする岸田総理?骨太は一転骨粗しょう症状態に 足もとで岸田政権が閣議決定した骨太方針(経済財政運営と改革 の基本方針2022)では当初新しい資本主義がもっと全面に 押し出されるはずだったものなのに安倍一派に強引に押された のか、すっかりアベノミクスを踏襲する内容に書き換えられて います。ただ安倍氏の強い意向を受けて今更アベノミクスを 復活させると言っても金融緩和を一手に引き受けてきた日銀が すでに政策破綻に追い込まれようとしている中ではその手法 は崩壊に追いやられるのは必至で、 経済金融政策はその道のプロの知見が結集して必ずいい方向に 向うなどと安易なことを想像する国民が多いのには呆れますが リアルな状況はとてつもなくクリティカルなものに直面して おり、いきなり破段階が訪れることも覚悟しなくてはならない ところにあります。果たしてこの危機をこの国は乗り切れる のでしょうか。

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