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モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年6月19日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「自己肯定感」という言葉の罠 それは「否定をするな」という風潮に結びつく 本当に求められるのは「自己存在感」 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------  近年、巷で「自己肯定感」「自己肯定感を高めよう」という言葉が溢れている。このような自己肯定感という言葉が広まった背景には、日本の、とくに若年層の幸福度の低さが理由だという。  内閣府の「若者の自己認識について」の調査によると、日本の若者は諸外国と比べて自己肯定感が低い人が多い傾向にある(1) 。  年齢別にみると、とくに10代後半から20代前半にかけて諸外国との差が大きくなってくるようだ。アメリカやイギリス、フランスやドイツでは、80%以上の若者が「自分自身に満足している」と答えている。これに対して、日本の若者は46%弱だそうだ。  あるいは、「自分には長所があるか」という問いにも、アメリカやイギリス、ドイツやフランスでは90%近くの若者が「はい」と答える一方、日本の若者は70%弱に留まっている。  そしてこの調査でわかった結果としては、日本の若者が諸外国の若者と比べて、なかなか自分の良さを見つけることができず、また自分自身の生き方についても満足できていないことであるというのだ。  「自己肯定感」という言葉は、1994年に臨床心理学者の高垣忠一郎によって提唱された(2)。高垣は、自身の子どもを対象にしたカウンセリングの体験から、当時、「没個性化」が生じていた子どもの状態を説明する用語として、自己肯定感を用いた。  一方で、常日頃から自己主張をしなければならないとし、とくに1970年代以降、自尊感情を高めようという運動が盛んになってきたアメリカでは、その時代から抑うつ、ナルシズム、不安といった問題が一層あらわれるようになったという調査もある (3)。  ただ、これだけ自己肯定感という言葉が広がっても、その解決策が、「自分の良さを見つめよう」とか、「ありのままの姿を大事にしよう」であるとか、漠然としたものでしかないのが実情であるしか思えない。  だが、誰もが自己肯定感を持ったら、世の中は大変なことになる。失政を犯した政治家も、「自分が正しい」と肯定し始め、そもそも世の中が大変なことになってくるはずだ。  むしろ、自己肯定感よりも、「自己存在感を持とう」という呼びかけが正しい。この自己存在感とは、いうなれば自分の居場所が今ここに、自分の中にあるという安心感をもたらすものであるという(4)。 関連記事→ 「政治に文句があるなら、あなたが政治家に立候補してはどうですか?」と精神障害を持つ私に暴言を言い放つ障害者支援TANOSHIKA代表・嘉村を告発します →https://mori-news-journal.jp/archives/2861 目次 ・なぜ、自己肯定感だけではだめなのか ・自己存在感とは何か ・自己肯定感を越えて 「この世界は自分自身の手で変えられる」という自覚を持て ・なぜ、自己肯定感だけではだめなのか  残念ながら、すでに過度な自己肯定感を求めることの弊害が起きている。とくに、「他者を批判しない」「批判をすることは悪だ」と考える若者が増えている。  その結果として、すべてを肯定し、現状を肯定し、過度な批判を恐れ、失敗してしまうことを恐れ、変化を嫌がり、その結果として「正義も悪もない」現状を何もかも追認してしまう若者が増えていっているような気がしてならない。  ただ、実のところ、この世の中は、絶対に許してはならないものがある。「自己肯定感」という言葉は、その倫理的・哲学的な問いを無視している。 て肯定し、反省などしないとなるとこの世の中から平和というものが生まれない。誰かが、必ず「失敗」を認めなければならない。  「自己を肯定する」というは、確かにいい言葉に思える。しかしその結果として、「何もかも肯定しなくてはならない」「否定をすることはだめだ」という概念が、いつの間にか私たちを支配しているようにしか見えない。  自己存在感とはそれとは全く異なる次元に立つ。自分を肯定も否定もせず、そのままの姿としてその「存在」を認め、そして他者の存在を認める。他者の存在を認めることで、自己と他者との違いを理解し、ときには他者を批判し、話し合い、分かり合う。  そういったことが、本当は求められるのだ。 ・自己存在感とは何か

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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