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佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.6.20 Vol.709
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【今週のコンテンツ】
特集
穏健化していた社会運動が、21世紀に先祖返りして「過激」になった
〜〜1960年代の学生運動時代から社会はどう変わっていったのか
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
穏健化していた社会運動が、21世紀に先祖返りして「過激」になった
〜〜1960年代の学生運動時代から社会はどう変わっていったのか
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『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(邦訳は紀伊國屋書店、2014年)という超刺激的なタイトルの本でも知られている社会心理学者のジョナサン・ハイトが、米アトランティックに『アメリカ社会がこの10年で桁外れにバカになった理由』というこれまた刺激的なタイトルで寄稿しています。邦訳は有料メディアのクーリエジャポンで読むことができます。
★ジョナサン・ハイトが解き明かす「アメリカ社会がこの10年で桁外れにバカになった理由」 | 「現代のバベルの塔」はいかにして建設され、崩されたのか
https://courrier.jp/news/archives/290872/
この記事でハイトが言っているのは、「SNSが政治的分断を推し進めている」というこれまでもあちこちで繰り返されている議論です。だから全体としてはさほど新味はないのですが、第3回のところで重要なことが書かれています。それはSNSが、一般社会の人々すべてを分断しているのではなく、少人数の過激なグループの分断を深めているだけなのだというポイント。
以下に引用しましょう。
「政治学者アレグザンダー・ボールとマイケル・バン・ピーターセンの研究調査によれば、ソーシャルメディア上で地位の獲得に汲々とし、そのためなら進んで他者を傷つけるのは、ある少数の人々のグループであるという」
「ボールとピーターセンは8つの調査を通じて、ほとんどの人々はオンライン上だからといって、普段より攻撃的にも敵対的にもならないことを発見した。むしろオンライン環境は、もともと攻撃的な少数の人々が多くの犠牲者を攻撃することを許してしまっているのだ」
「少数の嫌な奴らが、討論の場を支配してしまう場合もある。というのも、普通の人たちは、オンライン上の政治的な議論から簡単に撤退してしまうからだ」
もう全力でうなずくしかない指摘ですね。「少数の嫌な奴らが、討論の場を支配」「普通の人たちは、オンラインの政治的な議論から簡単に撤退」というのは、日本のツイッターでも日常的に見られる光景ではないでしょうか。
さらにこの記事では、モア・イン・コモンという団体による政治的党派についての調査結果が紹介されています。最も右翼的なグループと最も左翼的なグループとして、アメリカには以下のふたつの党派があるという設定。
献身的保守派(極右) 人口の6%
進歩派アクティビスト(極左) 人口の8%
そしてこの「進歩派アクティビスト」がSNSではダントツに活発なグループで、過去1年でここの7割の人が政治的な内容を共有していたとか。ついで「献身的保守派」が56%だそうです。そしてこのふたつのグループは、白人と富裕層の割合が多いこと、倫理や政治について均一な価値観を持っていることでとても共通していると言います。
なぜ均一な価値観に染まっているのかと言えば、「この研究の著者らの推測では、こうした意見の均一化は、ソーシャルメディアにおける思想取り締まりの結果である可能性が高い」とか。これもよく見る光景ですね。自分たちの党派の大勢と、少しでもちがう意見を言うと袋叩きになってしまうのです。
そしてハイトは、身も蓋もなくこう言い放っています。
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