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【Vol.435】冷泉彰彦のプリンストン通信『参院選の隠された争点とは?』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「黒田日銀は、どうして緩和をやめられないのか?」  円安が止まりません。そんな中で、エネルギー価格、そして資材・原材料 など輸入品の高騰が物価を押し上げています。明らかに「悪しき円安」の領 域に踏み込んでいるわけです。ですが、金融緩和と財政出動を続けてきた日 本銀行は、金融緩和を止めません。  日銀の黒田総裁は会見で「現在の物価上昇は資源高によるコストプッシュ 型のインフレだ。われわれが目指す物価上昇と異なる」と述べています。 「我々の目指す物価上昇」というのは、要するに管理できるような形で、2 %の物価上昇が起き、その結果としてその上昇が経済成長と賃金の上昇にな って、景気拡大への好循環が生まれる、そんなストーリーです。  黒田総裁は、今回の物価高は「そうはなっていない」と、猛烈に力説して いるわけです。それはそうでしょう。経済活動が旺盛になり、その結果とし て2%程度の物価と賃金の拡大が起こっているかというと、確かに違います。  ですが、よく考えれば、このまま金融緩和を続けて、例えば米国との金利 差が、投機対象になるなどしたら、どんどん円安が進行します。そうなれば、 エネルギーと原材料や資材はどんどん円建てでは上昇します。企業努力で価 格転嫁を一部にとどめても、上昇が進めば買い控えになります。そうすれば 内需が縮小して、本当に厳しいことになります。このままでは相当にマズい です。  では、どうして黒田総裁は動かないのでしょうか。5つあると思います。  1つは、急速な円高への恐れです。各国の財政はここ5年間にかなり悪化 しています。コロナ対策でカネをばら撒く一方で、軍事的な緊張に対しては 軍拡をするなど、様々な形で規律が緩んでいます。仮に、日本が金融引き締 めに動くと、国家債務はデカい一方で、それを国内で消化している日本の場 合は、他国と比較すると「まだマシ」だと見られる危険があります。  その場合に、投機的な思惑から円を買う動きが広がって、コントロール不 能になる危険があります。その場合に、エネルギーや資材は安くなりますが、 一番問題なのは、多国籍企業の業績を円に倒した場合に利益が思い切り小さ くなるばかりか、グローバルに形成された株価も円に倒したら収縮というこ とになります。  そうなると、特に東京など大都市圏の経済が大きく傷む可能性が出てくる のです。アベノミクスが逆回転してしまうわけです。勿論、介入にしても利 上げにしても、適度な範囲であればドル円のレートを「120円」とか「1 15円」といった水準でコントロールできる、そんなシナリオが成り立てば いいのですが、話はそうは簡単ではない、つまり円高に振った場合の行き過 ぎが怖いということはあると思います。  2つ目は、企業への貸し出しです。コロナ禍を生き抜くために、多くの企 業は相当目一杯の借金をしています。そして、ポストコロナの需要拡大につ いては、日本の場合は最大にはなっていません。そんな中で、仮に金利が上 昇しては、多くの企業が借入金の返済ができなくなる可能性があります。  また、積極的にポストコロナの経済に向けて、設備投資の拡大を考えてい る企業があったとして、その拡大のための借入金が高金利になってしまうと、 拡大意欲は萎んでしまうかもしれません。  3つ目は、インバウンドです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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